失敗から学んだ「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の大きな賭け!《それゆけ!カナモリさん》

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失敗から学んだ「長崎ちゃんぽんリンガーハット」の大きな賭け!《それゆけ!カナモリさん》

■逆張りの値上げ戦略

 リンガーハットの値上げは3年ぶりのことである。当時、世界中で食糧価格が高騰し、小麦をはじめとした穀物価格は最高値を記録していた。その原材料価格の上昇を定価に転嫁し、2006年9月、レギュラーちゃんぽんの値段が税込み399円から450円に引き上げられた。

 リンガーハットの多くの店舗はカウンターにスツールというファストフードスタイルであるが、399円というファストフードらしい手ごろな価格も人気の一因であったのは間違いない。それが10%以上の値上げで400円台中盤の価格になったのだ。結果として客数は激しく落ち込み、その回復に同社は大変な苦労をすることになった。

 昨年9月には当時の八木康行社長が辞任、2008年9月8日付け日経MJには、その理由として、原材料高を理由に〇六年九月に値上げ、客離れをひき起こした。その後、「背水の陣」(八木社長)で業績回復を目指したが、再建への道は険しかったと記された。

 では、今度の値上げは大丈夫なのだろうか?

 価格設定には3Cの視点を持つことが必要となる。自社視点(Company)・競合視点(Competitor)・顧客視点(Customer)の3つである。

 2006年の値上げを考えてみよう。

 小麦などの原材料費の高騰は、生産原価の上昇を表わしている。価格設定における自社視点を、「原価志向」の価格設定といい、生産にかかったコスト(固定費+変動費=原価)にいくら利益を上乗せしていこうかと考える方法だ。一定の利益を確保するためには、値上げやむなしという考え方になる。

 もう一つの競合視点を「競争志向」の価格設定という。競合となり得る商品を特定し、競合と全く同じ価格にするか、その上下何パーセントぐらいに設定するか、という考え方である。
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