地方都市で号砲、オフィスビル開発競争の行方 オフィスビル誘致にあの手この手

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中心市街地での再開発については、福岡市は2014年、札幌市は2016年に都市計画を改定。東日本大震災からの復興に手を取られ、中心市街地再開発の着手が遅れていた仙台市でも、「昨年初めから再開発に向けた議論が始まった」(二階堂聡・仙台市都心まちづくり課長)。景気回復を機に、市街地を一気に作り替えたい問題意識は各都市共通だ。

金融機関も側面支援を行う。広島銀行は昨年2月に「ひろぎんリートマネジメント」を設立。広島銀行がスポンサーとなって私募リートを組成し開発物件の受け皿となるほか、中国地方で老朽化の進んだ物件を取得しリニューアルを行う方針だ。

仙台地盤の七十七銀行も今年8月、市内のビル投資を行うファンドに対してエクイティ投資を行った。「地元の不動産開発に対して、ローンとエクイティの両面から支援していきたい」(佐藤礼司・七十七銀行コーポレートファイナンス課長)。同行は今年9月に仙台市と包括連携協定を締結しており、目的の1つには「市街地整備およびまちづくりに関すること」も含まれている。

七十七リサーチ&コンサルティングによれば、仙台市内におけるJ-REITの物件取得額は2015年をピークに減少に転じている。「投資に適した規模の物件が減っている」(田口庸友・調査研究部上級研究員)ためで、開発が進めば一層の投資マネーの流入も見込める。

マンションよりオフィス

同じ不動産開発でも、自治体がマンションやホテルよりオフィスビルの誘致を優先するのには理由がある。「大学を卒業した後、就職で東京に出て行ってしまう」(仙台市の山田課長)という地方共通の悩みだ。企業を誘致し雇用を創出できれば、東京への人口流出に歯止めをかけられる。

とくに求めるのはIT企業だ。福岡地所の開発する天神ビジネスセンター(仮称)は、「クリエイティブなグローバルトップ企業を福岡に呼び込む」ことをコンセプトに据えている。成長の早いIT企業は人員増強やオフィスの増床のスピードが早く、若者からの就職人気も高い。

仙台市の場合、ソフトウェア開発やコールセンターといったIT企業の誘致に対して、助成金制度を設けている。IT企業が入居するにあたって、ネックとなったのが築古ビルの電力だった。古いビルは電力容量が少なく、大量のPCやOA機器を使用するテナントに敬遠されることから、ビルの建て替えはIT企業誘致の後押しにもなる。

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