「リスク顕在化なら、躊躇なく追加緩和」 リップサービスで、期待をつないだ日銀黒田総裁

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2月18日、日銀は金融政策決定会合で異次元緩和の継続を決めた。写真は黒田東彦総裁。都内で同日撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 18日 ロイター] -日銀は18日の金融政策決定会合で異次元緩和の継続を決めた。市場の期待が根強い追加緩和は見送ったが、金融機関向け融資支援の規模倍増を打ち出し、日経平均株価<.N225>が一時前日比500円以上急騰した。

黒田東彦総裁は会見で、下振れリスクが顕在化すれば躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和に踏み切る姿勢を強調し、市場の追加緩和期待をつないだ。

成長基盤支援融資など2倍に、公表後に株価急騰

会合で国内の景気判断は「緩やかな回復を続けている」とし、現状・先行き判断ともに1月会合の内容を据え置いた。白井さゆり審議委員は「国内の雇用・所得の改善ペースにも言及すべき」と前回に続いて主張し、リスク要因の記述に反対した。木内登英審議委員がこれまでに続き2%の物価目標の達成を緩やかなものとし、2015年春をメドに異次元緩和のあり方を見直すよう提案したが、反対多数で否決された。

3月末で受付期限を迎える成長基盤支援制度で、小口やドル建てなど特殊な貸出を除いた「本則」での枠を3兆5000億円から7兆円へと2倍に引き上げた。同制度の出資・動産担保融資(ABL)向け、小口向けは各5000億円、外貨建て投融資は1兆円相当で据え置き、いずれも受付期限を1年間延長する。

金融機関の貸出増加支援制度も、現在は貸出の増加額を日銀が金融機関に低利で融資しているのを貸出増加額の2倍分に変更し、受付期間を1年延長した。4月末に期限を迎える被災地の金融機関向け資金供給オペも1年間延長した。

このところ決定会合の直後には追加緩和期待の反動から瞬間的な円高が進むことが多く、この日も発表直後には日経平均先物やドル/円は一時売られた。しかし、その後急速に切り返し、日経平均は一時500円高まで急騰、ドル/円も102円台後半まで円安が進んだ。

黒田総裁「新興国に神経質な動き」

黒田総裁は会見で、新興国経済について「経常収支の赤字など構造面でぜい弱さを抱える一部の国について神経質な動きが見られている」と指摘、「これらの国では当面成長に勢いを欠く不確実性が高い状態が続く」との見方を示した。

日銀は前回1月の決定会合で、海外経済の判断を小幅上方修正したが、直後に米緩和縮小への警戒感や新興国からの資金流出懸念で日経平均株価<.N225>が4カ月ぶりに1万4000円割れとなったため、市場では米緩和縮小や新興国経済に対する発言が注目されていた。

リップサービスで追加緩和期待つなぐ

17日に公表された2013年10─12月期の国内総生産(GDP、速報値)は前期比年率1.0%増にとどまった。2013年度の成長率が前年比2.7%との日銀見通しに届かないとの見方も出ているが、日銀の景気・物価見通しに対する下振れリスクへの政策対応については「そのようなリスクが顕在化すれば、躊躇なく現在の異次元緩和の調整を行う」と述べた。

4月の消費税引き上げを控え、「駆け込み需要がすでに一部で顕在しており、自動車や家電など耐久財の消費について、ここのところ駆け込みの影響が強まっている」と述べた。

決定会合と総裁会見について、市場では「売り方をけん制する点で総裁発言は効果的。言葉遣いがうまく、市場の期待を切らさないようにリップサービスを重視した発言が多かった印象」(松井証券シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏)、「追加緩和期待をつなぎ止めるとめるため、発言で期待のマネジメントを試みたようだ。過大な期待を抱かせない一方で、失望感を招くようなことにもつなげない発言になった」(みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏)といった見方が聞かれた。

(竹本能文 編集:山川薫)

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