NYダウは最高値更新後、暴落の可能性がある FRBの過剰金融緩和がもたらす大波乱に注意

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もっともこうしたFRBの過剰な金融緩和だけでは株価の上昇も長続きせず、一時的なバブルを作り出すだけに終わってしまいそうだ。世界的な景気減速が着実に進んでいる一方、欧州中欧銀行(ECB)や日銀の緩和余地はほとんど残っていないという状況下では、FRBの利下げの効果が限定的なものにとどまる可能性が高いからだ。

米中の貿易交渉は部分的な合意に達したが、第2段階の交渉開始は今回の合意が正式に署名された後であり、交渉のさらなる長期化は避けられない。その間も現在既に賦課されている関税の影響によって、景気減速も続く。市場も最終的には、こちらの方を懸念材料視するようになるだろう。

もし、10月のFOMCで追加利下げが行われ、その後株価が上昇基調を強めるなら、実際は12月にさらなる利下げに踏み切ることは難しくなる。仮に利下げに踏み切ったとしても、さすがにそれで当面は打ち止めになるとも見方が浮上、材料出尽くし感が高まる可能性が高い。利下げ期待が高まっている間は、悪い材料は良い材料と、経済指標の悪化に対する反応も鈍りがちになるかもしれないが、期待が後退するにつれ、景気減速に対する懸念は再び大きな売りを呼び込むことになるだろう。利下げの有無に関わらず、12月のFOMC後は価格調整が進むことになるのではないか。

ダウ平均は2万2000ドル台まで下落も

中長期的な視点で言えば、こうした形でのバブルは比較的早期に弾けてしまう方が良いのかもしれない。今のところ可能性はかなり低いと考えるが、仮に10月と12月のFOMCで共に利下げが行われ、その後も株価の上昇が続くようなことがあれば、当然ながら原油をはじめとした商品価格にも投機資金が流入、年明け以降にインフレ圧力が高まることになるからだ。

一方で米中貿易交渉が早期の包括合意は極めて難しい状況にあるなか、景気の減速にも歯止めが掛からなくなる可能性も高い。そうすれば、インフレと景気減速が同時に起こる、スタグフレーションに陥るリスクも現実味を帯びてくる。

米長期金利が低い水準にとどまっていてくれれば良いが、インフレ懸念が高まる中でいったん金利が上昇に転じれば、FRBも金融政策を再び引き締め方向に転換せざるを得なくなる。こうしたシナリオが実際に進むようなことがあれば、株式市場の調整も思った以上に大きく、深いものになるのではないか。NYダウ平均が2万2000ドル台あたりまで値を下げる(現状よりも20%弱の下げ)ことがあっても、何ら不思議ではないと考えておいた方が良い。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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