定額給付金を配るための事務費825億円の問題点

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 そこで、筆者が総務省に「銀行と振り込み手数料の割引交渉をすべきでは?」と尋ねると、「銀行協会との値段交渉は独占禁止法違反だからできない」との回答だった。公正取引委員会に確認すると「個別の銀行ごとに値引き交渉をすれば問題ない」と言う。それでも総務省は振込み料金の値引きを想定しないようだ。

100%補助金だから地方自治体はコスト削減のインセンティブがない

総務省は、最後は精算するから積算はいい加減でもいいといった回答だ。しかしながら、この補助金は、100%全額政府から、つまり国税から支払われる。地方自治体は使った費用はすべて国が支払ってくれるので、コスト削減する努力をする必要がない仕組みとなっている。

おそらくこのままだと、郵便は正規料金で、銀行の振り込み料金は正規料金で、支払われることになるだろう。本来支払われなくて済む税金が使われてしまうことになる。

使用したお金をチェックできない?!

割引等を適正に活用したかどうか、使ったお金をきちんとチェックすればいいではないか? と読者は思われるかもしれない。

確かにそのとおりで、「補助金適正化法」という法律では
『第三条(関係者の責務)
 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。』
となっている。法律では、総務大臣は効率的な使用をしなければならないのだ。

しかし、補助金を配る自治体数は約1800! 対して、総務省における定額給付金の担当者は10人程度しかいない! しかも仕組み上は自治体がコスト削減に努めるインセンティブはまったく働かない。どうやって使用した金額が適正かどうか、チェックするのだろうか?

予算の無駄使いが生じないか、監視が必要だ。

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