1日5時間勤務、全日空ママのキャリア観 45人の部下を持つ管理職から、超時短へ

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かつての部下に仕える――。ワーキングマザーの中には、そんな状況に戸惑いを隠せない人も多いかもしれない。だが田澤さんは、その意識の切り替えはスムースにできたと言う。

「むしろ、上司に気を使わせてしまって、申し訳ないなと感じています。だから、私は『話しやすい先輩』というスタンスで、彼女たちの悩みを聞くなどして、助けになりたいと思っています」

母としての新しい働き方を求めて

羽田空港の拡張に伴い、2014年4月には、新入社員のグランドスタッフが例年の約4倍、200人以上、入社してくる。彼女たちの指導・育成にも貢献できるのではないかと田澤さんは考えているそうだ。

GTCを経て、総合職に転換した先輩、管理職になった先輩もいる。だが母になった田澤さんは、現時点では、時短を辞めることや、昇進は望んでいないと言う。

「もちろん、もっと働きたい。実際、昨年から、勤務時間を6時間に増やしましたが、それ以上働くと、今度は子どもの世話ができなくなり、家庭が駄目になってしまうという思いがあります。働きたい、でも……という葛藤は、絶えずありますね」

もうひとり子どもが欲しいことを考えると、キャリアの悩みは尽きない。

「それに、短時間勤務を取得した先輩があまりいないため、今後『時短の人』がどうキャリアをつくっていったらいいのか、その先が見えないのが少し不安ですね。上司と面談させて頂いて、キャリアプランについても話し合っていきたいです」

子どもがもうひとりでできたとしても、「空港が好き、人が好き」な思いに変わりはないから、できるだけ仕事は続けていきたいと抱負を語る。

「これから羽田空港はますます国際化し、便も増えます。それに伴い、時短勤務だけではなく、便が頻繁なときに集中して働くなど、もっと多様な働き方が増えたらいいなと感じています」

母となり、第一線から一歩退いたとしても、後輩のよきメンターになることに自分の役割を見いだしていく――。それはわかりやすい外面的なサクセスストーリーには見えないかもしれないが、ひとつの思想的な成熟であり、内面的なサクセスストーリーだと思う。

(撮影:今井康一)

 

 

佐藤 留美 ライター
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