海に漂う「プラスチックごみ」の深刻すぎる影響 生物の体内にも蓄積、使用量削減の必要性

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マイクロプラスチック問題が深刻なわけ

――プラスチックに化学物質が添加されていたとしても、溶出しないように設計されているので、安全という話を聞きます。

確かに溶け出さないように設計されているので、プラスチック製品の中にとどまっています。ところが、さっきお話ししたように、海洋に漂う間に細かく砕かれ、マイクロプラスチックになれば、表面積が増えて、中に含まれる物質が溶け出しやすくなりますよね。プラスチックが生物の体内に取り込まれ、プラスチックに含まれる有害化学物質が生物の消化液の中で溶けだし、肝臓や脂肪組織などにたまる。食物連鎖を通して、結局人間の口に入るかもしれません。それがマイクロプラスチック問題だと私は思っています。

マイクロプラスチック汚染で起こるカルシウム不足

――オーストラリアの研究者の研究で、プラスチックを摂取した海鳥の血中カルシウム濃度が減っていることがわかったとおっしゃいました。生物の健康への影響がすでに出ているということですか。

血液検査で異常が出ているわけですから、健康への影響が顕在化しつつあると思います。アメリカのレイチェル・カーソンが1962年に世に出した『沈黙の春』で述べていたこととまさに同じことが起きてしまうことが心配されます。DDTにより、カルシウムの代謝がおかしくなり、アメリカの国鳥・ハクトウワシが減っているという、カーソンの「告発」がDDTの使用規制につながりました。その後、多くのワシ類の卵の殻が薄くなることはまれになってきました。

高田教授が描くマイクロプラスチック汚染(高田教授作成)
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