NISAの稼働率が低迷 長い「待ち時間」に、冷める投資熱
[東京 6日 ロイター] -「貯蓄から投資へ」──。鳴り物入りで今年1月から始まったNISA(少額投資非課税制度)だが、個人マネーの市場への流入は思うように進んでいない。
申し込みから実際の口座開設までかなりの「待ち時間」がかかり、その間に投資家の「意欲」が冷めてしまうという事情がある。大きな障害として関係者から意識されているのが、4─6週間かかる税務当局の重複口座の確認作業だ。金融機関の関係者からは政府に対し、改善を求める動きも出てきた。
1月初めにNISA口座の開設を申し込んだ香川県の男性会社員(37)は「口座開設にかかる時間が長い」と指摘する。
非課税という点に強い魅力を感じて申し込んだが、1カ月近くたった今も、口座は開かれていないという。「1週間くらいでできると思っていた。何にそんなに時間がかかるのか」と不満を漏らす。
NISAは1人につき1口座のみの開設が可能で、重複口座の有無を調べるため、税務署がそれぞれの口座開設者をチェックする。その処理期間として税務署は4─6週間という期間を設けている。
金融機関で申し込み手続きをしてから口座が開かれるまで、金融機関での事務作業時間を含めると、実際には最長で6週間以上かかる場合もあるという。
国税庁によると、NISAの口座開設数は2013年末時点で約475万件となり、政府が2020年の目標とする1500万件の約3分の1に到達した。
しかし、ロイターが証券会社と銀行の計8社に対して問い合わせたところ、口座の稼働率は平均で2割程度にとどまっている。口座数ベースでは出だし好調だが、今のところNISAを通した取引はそれほど活発ではない。
その原因は長い「待ち時間」にあるようだ。「1カ月半もすれば相場も変わるし、待っている間に投資熱も冷めてしまう」と前出の男性は話す。さらに足元の市場動向が下落基調にあることから投資意欲が湧かず、NISA口座が開設されても利用するかどうかは分からないとしている。
一方、金融機関側も問題点を認識している。カブドットコム証券・営業本部の荒木利夫副本部長は「申し込みには住民票が必要であり、手続きが煩雑だ。その上、投資家が待たされる時間も長い。利便性を高めるためにも、こうした点は改善していく必要がある」と指摘する。
同社のNISA口座開設数は1月末時点で約5万6000件、稼働率は約25%だ。新規顧客は全体の1割弱。そのうちの約半数、全体の5%は投資未経験者が占める。
新たな投資家層を囲い込むという点でNISAに対する期待は大きく、同社の斎藤正勝社長は1月、政府が開催する有識者会議で、手続きをめぐる事務処理の簡素化に向け、徴税と社会保障給付に活用するため政府が導入を決めている「共通番号(マイナンバー)制度」の民間活用を提言するなど、制度面での改善に向けて積極的な姿勢をみせている。
荒木氏は「従来の課税口座なら最短で即日開設ができるが、1カ月半もかかるのは問題だ。税務署の調査期間を短縮してもらい、制度的に使い勝手の良いものにできれば、利便性が高まるだろう」と語る。
これに対し、全国の税務署を管轄する国税庁では「4─6週間という期間は事務処理の時間などを考慮したうえで決めたもの。期間としては妥当な長さで、この期間を厳守して処理に当たっている」(国税庁法人課税課)とコメントしている。
(梅川崇 編集:伊賀大記)
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