「おっさんずラブ」女性の心にグッと刺さる理由 BLファンをTVの前に引っ張ってこられた良作

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河崎:徳尾さんの1日は、どのようなスケジュールなのでしょう?

徳尾:朝はちゃんと起きるほうです。7時か8時には起きていますね。締め切りが危ないときは朝4時、5時に起きます。そういうときは、前日の締め切りを過ぎているんです(笑)。出版社やテレビ局の人たちは朝10時頃に出社されることが多いので、それまでに送っておけば大丈夫なのでは……と歪んだ解釈をするようになっていきました。ダメなんですけどね。集中できるのは午前中と夜の3~4時間です。小説家のエッセイなどを読むと「1日に集中できるのは3時間」と書いてあったりするので、勝手に勇気づけられています(笑)。

河崎:私も書けないとき、編集者さんに村上春樹さんの1日のスケジュールを教えていただきました。そんな最高の方と比べられても!と思いましたが。

徳尾:村上春樹さんは朝5時とかに起きてからいきなり、深い海に沈むように物語の世界にどっぷり入り込んで書くようですね。お昼過ぎまで一気に書いて、その後で走ったりする。僕は浅いプールなので、そこまで沈めないですね(笑)。すぐに浮かんで息継ぎしてしまいます。

こういう仕事をしていると、オンとオフの切り替えにすごく憧れます。逆に、オンとオフをはっきりさせて、朝起きてすぐに仕事して、夜はもうお酒を飲んだりしているんじゃないかと思われがちですが、実はぜんぜんそうじゃない。オンとオフを切り替えられない葛藤をしているうちに、日々過ぎていきます。

脚本を作る苦労

河崎:連続ドラマはどのようなペースで書いていたのですか?

徳尾浩司(とくお こうじ)/脚本家・演出家 。1979年4月2日生まれ、大阪府出身。慶應義塾大学卒業。近年の作品に「おっさんずラブ」『劇場版おっさんずラブ~LOVE or DEAD~』「ミス・ジコチョー~天才・天ノ教授の調査ファイル~」などがある(撮影:原貴彦)

徳尾:「おっさんずラブ」のような1時間のドラマの場合、A4用紙を横にして縦書き34行を30枚書けば、だいたい1話分になります。最初にプロデューサーとプロットを決める打ち合わせをするのですが、「前半はこういう展開で、終盤はこういう展開で、こういう終わり方にしましょう」「ここは誰々が誰々にアプローチしましょう」などと決めていきます。ただ、脚本にはなっていないので、それを僕が自分のアイデアを盛り込んでいきつつ、脚本にしていくわけです。

初稿の場合は30枚書くのに5日間か6日間もらいます。それでもなぜか終盤に作業が偏っていきます(笑)。

河崎:そうなんですか!

徳尾:理想はオンとオフを切り替えて、同じペースで6日間使いたいのですが、そうはならない。考えているだけで一向に筆は進まず、3日目ぐらいに「これはヤバいぞ」と思い始めます。早くキーボードをたたけよと思うのだけど、書く作業は本当に苦しいので、その浅いプールに飛び込む勇気がなかなか出ない。そうこうしているうちに、土壇場になって子どもの夏休みの宿題のように取り掛かるわけです。それが第1稿です。

河崎:それで終わりではないんですね。

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