「韓国ウォン安」が新たな貿易戦争を生む「懸念」 ベトナム経由での対米輸出増加が火ダネに?

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2018年には韓国の全輸出金額約6000億ドルのうち、半導体が概ね1267億ドルを占める(韓国貿易協会)など、韓国企業の外需依存・ハイテク依存度は高いと言えます。グローバル景気の減速下、ウォン安を背景とした韓国ハイテク企業の輸出競争力の向上や次世代の設備投資余力をもたらすことで、日米中のハイテク企業に対して競争優位を生み出す可能性もあります。さらに韓国ハイテク企業は第3国であるベトナムを活用し、米中貿易摩擦の悪影響をうまく回避しているように見えます。
具体的な事例を挙げてみましょう。

サムスンがベトナムの輸出に大きく寄与している現実

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足元、対米輸出・貿易黒字が問題視されつつある中、ベトナムの2018年の全輸出額(約2500億ドル)のうち、約25%(約600億ドル)の輸出が韓国のハイテク企業であるサムスン・ベトナムによるものだと言われています。サムスン電子はこの数年で中国の深圳や天津工場を閉鎖するなどしながら、中国からベトナムの拠点に積極的にシフトしてきました。

2019年に入り、ベトナムの対米輸出の伸びは拡大してきており、大統領選挙を来年に控える米トランプ大統領にとって、米国民の雇用を守り、大国としての覇権を維持することを旗印に、中国だけでなく、韓国およびベトナムとの貿易紛争をぼっ発させる可能性も捨てきれません。

以上、見てきたようにここからさらにウォン安が進めば、韓国のハイテク企業は、アメリカの覇権を揺るがしかねない次世代のハイテク投資に一段と乗り出す恐れがある・・・・・・。これらが、トランプ大統領の逆鱗に触れ、韓国やベトナムも巻き込んだ広範囲の貿易紛争を引き起こしてしまうリスクがあるというわけです。

こうした可能性を、今のマーケットはどこまで織り込んでいるのでしょうか?日韓の安全保障や、韓国の文在寅大統領の側近の問題だけでなく、投資家はこういったリスクをしっかりと認識しておく必要があるでしょう。

中村 貴司 東海東京調査センター 主任調査役 シニアストラテジスト

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なかむら たかし / Takashi Nakamura

日系、外資系証券、損保・証券系運用会社でアナリスト、ファンドマネージャー等を経て現職。ファンダメンタルズ分析にテクニカル分析や行動ファイナンス理論を組み合わせた投資戦略、市場分析を重視。国際公認投資アナリスト(CIIA)、CFP、国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)。日経CNBC等での出演のほか。日経新聞、QUICKなどでもコメント・執筆。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター「ファンドマネジメント講座」などで講師を務める。

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