車離れもたばこ不振も、全部スマホのせいだ スマホが奪った「異業種」のパイ
以前、こんな話を聞いたことがある。「スマホが普及し、チューインガムが売れなくなった」――スマホはガムのようにかんでも甘くないし、さわやかな気分 にもなれない。この話の真偽は確かではないが、ガムがそれまで満たしていた暇潰しの需要を奪ったという仮説はあてはまりそうだ。
考えてみると、昨今叫ばれるたばこの不振やビール離れも、「全部スマホのせいだ」と言えるかもしれない。ムシャクシャしたストレスをたばこではなくスマホゲームが解消し、飲み会の近況報告もFacebookやLINEで十分。いつでも持ち歩けるスマホが、異業種のパイを奪っているということはありそうだ。
スマホが奪った「3つ」の需要
電通マーケティングデザインセンターの小山雅史氏は、スマホが奪った異業種のパイを大きく3つに大別する。
ひとつは、「機能的な価値がスマホに置き替えられた」ケース。たとえば、カーナビや従来型のゲーム機はわかりやすいだろう。ほかにも、年賀状の枚数が、毎年、緩やかに減っているのは、スマホを中心に利用されるFacebookなどのソーシャルメディアで古い友人とつながるようになり、お互いの存在確認を日常的に行えるようになったからではないだろうか。
2つめは、スマホと「時間の取り合いになった」ケース。従来型のゲーム機はここにも当てはまる。本や新聞を読む人が電車の中でめっきり減ったように、スマホの(しかも場合によっては無償で)提供する文字情報が、本や新聞を読むという時間を取った、とも言えるだろう。このケースに当てはまりやすいのは、これまで「暇潰し」の需要を満たしていた商品だ、と小山氏は分析する。持て余した時間や手持ちぶさたを、時には寂しさを、スマホが埋めてくれているのだ。
逆にスターバックスなどのカフェやコンビニチェーンは、「パラレル(並行)」に使用できる環境を作ることで、時間の取り合いを回避している。店舗にWi-Fiスポットや電源を設置することで、スマホの「ながら利用」を前提に客を誘引している。今後は店内でのスマホの利用状況から顧客行動に関するビッグデータを取得し、さらなる購買行動につなげる動きも出てくるだろう。パラレルという観点では、テレビとの相性もよい。いわゆる、「ながら視聴」だ。
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