現地ルポ、日立「イタリア鉄道工場」の最深部 設備や技術力は?日本庭園や食堂もすごい

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ところで、このピストイア工場には何人の日本人が働いているのだろうか。「現在、常駐の日本人スタッフは働いておらず、日本側から出張で数人が来ています」とのことで、その人数は訪問した時点で4人とのことだった。

ピストイア工場に常勤で働く日本人スタッフはいない。中村尚隆氏(左)は数週間のイタリア長期出張で、英国向け車両の技術指導とともに台北メトロの技術を習得、日本へ持ち帰り、現場での作業に役立てることになる(筆者撮影)

その1人、中村尚隆氏は英国向け車両の技術指導でピストイア工場へ来たが、現在は逆に、前述の台北地下鉄向け車両の技術を習得中だ。

日本人の感覚からすると、独自の高い工業技術を持つ日本企業が、他国から得る技術があるのかと意外に思うだろうが、「日本にはない技術はたくさんありますよ」とのこと。ロックの設計に携わった、同社鉄道ビジネスユニット主管技師長の稲荷田聡氏も、「現在は日本とイタリア、双方の技術を比較しながら、どれを取り入れていくのかを見極めている最中です」と答えていた。

日本の技術を一方的に押し付けるのではなく、いいものは積極的に吸収していこうという様子がうかがえる。

目立つ英国向け車両

工場の奥へ進んでいくと、さまざまな車両が目に入ってくる。英国向け車両も目立ち、かなりの数の英国製造分が、こちらへ回されていることがわかる。ロック誕生の記事内でもご紹介したが、同社が製造をするうえでとくに気をつけている点は、依頼主が指定した納期をきちんと守ること。いくつかの工場へ分担させることで、1つの工場へ負担が集中することを避け、余裕を持った製造計画を立てられることへもつながる。

最終チェックをするトレニタリア向けETR700型車両(筆者撮影)

屋外でも完成して出荷を待つ、ロックやETR700型車両を多く見かけた。ETR700型車両は、旧アンサルドブレダが受注した最高時速250kmの中高速列車で、もともとオランダ向けに製造された車両。諸般の事情でオランダでの営業がなくなり、新たな就職先として地元イタリアへ導入されることが決まった。

トレニタリア向けに仕立て直されたETR700型は、新車同然に生まれ変わり、5年間のメンテナンス契約も同時に締結(+5年のオプション契約もあり)、現在は順調に営業運転が行われている。

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