人生で大事なのは「ジジ殺し」のスキルである 「サードドア」で奇跡のルートが開かれる

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日本人は、正攻法、つまりファーストドアにいきがちで、サードドアをくぐるのは苦手。ですが高度成長が終わったこれからの時代、ますます大切になります。くぐっている人が少ないということは、逆に日本ではサードドアをくぐり抜ける道は空いているということ。実はチャンスがあるということなんです。

だから、ジジ殺しのスキルが大事。僕の人生のKPI(主要指標)は、「あいつは俺が育てたんだ」って言ってくれる「じじい」が何人いるかだと本気で思っています。

周囲は僕のことを「投資のプロ」だと思っているようですが、そうじゃない。僕はお金を出すプロじゃなくて、「お金を預けてもらう」プロなんです。

フルマラソンを走りきった人は、「20キロのところはつらいぞ」とか、「ゴール前のあの坂はやばい」とか、自分の体験を次世代に伝えて、活かしてもらいたいと思っているんです。だからそういう人に素直に甘えればいい。僕も、すごい人にあったら、「あなたのファンです、リスペクトしています」っていう気持ちは隠さないですよ。

飲み会の誘いは絶対に断るな

本のなかで、著者のメンターが、「いまやっているミッションをやめて、俺の下で働けよ」って言うシーンがありますよね。「人生にはステップアップする時期が必要で、お前は今その時期に来ている」みたいな。著者はその申し出を断るんだけど、僕ならそっちに行っちゃったかもしれない(笑)。

佐俣アンリ(さまた あんり)/慶應義塾大学を卒業後、株式会社リクルートに入社。EastVenturesを経て、2012年に独立系ベンチャーキャピタルであるANRIを設立。インターネット・ハイテクノロジー領域110社に投資を実行。シードファンドとして日本最大規模となる約100億円のファンドを運営中。2019年7月、日本ベンチャーキャピタル協会理事に就任(写真:佐俣アンリ)

あのメンター、かなり怪しい感じでいいですよね。どんなエグゼクティブにも顔パスで会えるやつって実際にいますから。自分で道を切り開くのか、怪しいメンターのルートに乗るか。僕は、けっこうへんてこなルートが好きなんです。

ほとんどの人は正面入り口にこだわるんだけど、まれに、行列に並ばなくていいってわかっていて、変なルートをすり抜けられる感覚を持っている人がいるんです。そういう人は、その能力を活かせばいい。

僕も若いとき、まだ誰でもなかったころに、松山太河さんという伝説的な投資家に拾ってもらった人間なので。周囲から、「お前、なんかいつもここにいるね」って思われるくらい紛れ込めるのは、才能じゃないかな。いまこの瞬間だと場違いとか、実力不相応な場所にいられるスキルっていうのは、長期的には、すごい強みになりますよ。

「スルスルッと、その場にまぎれこんでいる」才能と、「ひゅっと、拾われる」才能。これらが、行列に並ばなくていい、ベンチャーキャピタリストの才能です。それはどんな仕事でも同じで、裏道がやっぱりあると思います。

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