博物館で親の行動が子に与えるこれだけの影響 夏休みに子どもと行きたい「特別展」はこれだ

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そもそも、発達心理学のフィールドでは、博物館での親子の会話が、子どもにとって展示を解釈するための豊富な知識源になっていることがわっている。2歳半くらいという早い段階から、子どもは何気ない質問を通して、大人から説明を引き出そうとするとも言われている。

また、ダイアリー・スタディーと呼ばれる方法を用いた研究では、早くも3、4歳ごろまでに、子どもは質問するよりも、説明することを好む傾向があることが明らかになっている。さらに、結論や推測と比べ、解釈をめぐる会話を交わすことのほうが、子どもの認知能力の発達を刺激する傾向がみられるという研究もある。

まずは、親子で展覧会に行こう

一連の研究から言えることは、企画展に訪れた際、親が声に出して展示キャプションを読むだけでも、何もしないより大きな効果が期待できそうだということだ。そのうちに、子どものほうが展示パネルを声に出して読むかもしれない。

親子の間で、展示品の解釈をめぐり、ちょっとした議論が成り立つようになれば大成功である。親はミュージアムの中で声を出すなんてことはできないと感じ、子どもは親と話をするのを恥ずかしがるかもしれないが、その場合は、音声ガイドを借りるのも一案だ。

ともかく、まずは、親子で展覧会に行こう。そして、展示品についての説明を聞かせてあげよう。ただ、1つ気をつけておきたいのは、科学博物館の展示を前に、親は女の子よりも男の子に対して、より頻繁に科学的な説明をするという研究があることだ。

就学前の女子に対するそうした親の態度は、その後の科学リテラシーに、何らかの影響を与える可能性があると考えられている。将来の子どもの科学の習得にプラス効果を与えることを意識して、親子で博物館に行きたいものである。

瀬川 律子 文筆家

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せがわ りつこ / Ritsuko Segawa

アートアンドパート 代表取締役。東京大学大学院文化資源学研究室修士課程修了。1991年日本の現代美術マーケットの育成に大きな役割を果たした白石コンテンポラリーアートに入社。1996年アートアンドパートを設立し、日本のミュージアムにおける音声ガイドの普及を牽引してきた。これまで、数々の展覧会の音声ガイドの脚本執筆を手掛けるとともに、公共のアート・プログラムのコンサルティング、ラジオ・パーソナリティー、アート・ライターの活動などを行ってきた。現在は、音声ガイド制作の若手育成に力を注いでいる。

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