住友重機、焼却灰施設を巡る紛争の全貌 京都市とのイザコザは裁判に発展も

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確約していた2013年8月末までの引き渡しが実現しなかったため、京都市は工事発注契約の解除を通告し、11月には損害賠償などを請求。住友重機へ支払い済みの工事代金(98億円)の返金とその利息、施設整備のために他の土木・建築工事業者に支払った費用など、その合計請求金額は202億円にも上る。さらに、同社の負担ですみやかに施設全部を解体・撤去するよう求めた。

これに対して、住友重機側は要求の受け入れを拒否。もとはと言えば、同社の技術的な問題が招いたトラブルではあるが、同社にも言い分はある。「引き渡し期限を守るため、(試運転時に出た不具合の)具体的な改善策を提出したが、それがことごとく却下され、8月末までの引き渡しができなかった。今回の契約解除通告や賠償金請求はあまりに一方的なものであり、到底応じられない」(広報・IR担当者)。

住友重機は国の紛争審査会へ調停を申請

住友重機械工業の別川俊介社長(撮影:今井康一)

金銭的な負担も重い。本来の期限(2010年5月末)を過ぎて以降、1日あたり200万円の遅延損害金を市側に支払ってきたうえ、人件費など多額の追加費用もかかっている。これまでの出費だけで考えても、同社にとっては大赤字案件だ。さらに、市側の要求をすべて受け入れれば、追加で200億円を大きく上回る特別損失の計上を強いられる。これは同社の年間営業利益(2013年度の会社予想で300億円)にほぼ匹敵する金額だ。

 事態の打開を図りたい住友重機は昨年12月、「中央建設工事紛争審査会」へ調停申請を申し立てた。同審査会は建設請負契約に関する紛争を対象として、弁護士や技術専門家らで構成する委員会が中立な立場で和解案を提示する仲裁・調停機関。住友重機としては、同審査会の協力を得て京都市と和解し、早期に工事を再開・完遂させたい考えだ。

 ただし、京都市側の態度が軟化する気配はない。「当方としてはあくまで、住友重機が解約解除を受け入れ、請求した賠償金の支払いと設備の撤去を速やかに行うよう改めて強く求めるまで。譲歩して和解するつもりはまったくない」(市の環境政策局・適正処理施設部施設管理課)。

 審査会が和解案を提示しても、市側に受け入れる意志がなければ和解は成立しようがない。京都市では最終手段として裁判も検討しており、その場合には議会での承認を得てからの訴訟になる。いずれにしても、焼却灰溶融施設工事を巡る両者の紛争は、決着まで長期間を要すことになりそうだ。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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