銀座No.1ホステスは「美人ではなくセンス」の人 ビジネスのセンスを磨くコツは「諦めが肝心」

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内田:今の話を聞いて思い出したのが、銀座のクラブのナンバーワン・ホステスがどう決まるのか。私の主観も入りますが、ほとんどの店で、ナンバーワンは一番美人とは限らない。

これは私の仮説に反するのでリサーチをしてみたのです。すると、みんな自分は一番美人ではないことを自覚していて、ペン習字を習って手紙作戦をとったり、日経新聞を丹念に読んでビジネスの会話力を磨いたり、誕生日など大事な日を覚えて前後に必ず電話を入れたりと、戦略的に動いていました。一番美人ではないがゆえに、どうしたらナンバーワンになれるかをつねに考え、努力を継続させてきた結果だったのです。

そのように、ある方面のセンスがなくても、別のやり方で補えるセンスがある。

肝は右脳と左脳のシークエンスにある

内田:経営者と話していると、「私は左脳を使うのが得意で、訓練もしてきたが、どうもひらめいたり、感情を駆使して人を動かしたりするのがいま一つだ。どうしたらいいか」と質問されることがあります。

楠木建(くすのき けん)/一橋ビジネススクール教授。1964年、東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(ともに共著、東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)、『すべては「好き嫌い」から始まる』(文藝春秋)、『戦略読書日記』(ちくま文庫)がある(撮影:黒坂浩一)

楠木:それは、右脳と左脳が分業可能かという問いに近いですね。だとすれば、その質問への僕の答えは、「分業は不可能」です。つまり、私はロジックが得意だけど、右脳が働かないという人は、本当はたいしたロジックの使い手ではないかもしれない(笑)。

要するに「あなたは右脳派、左脳派のどちらのタイプか」というよくある問いははなから的外れだということです。およそあらゆる知的活動は、内田さんのおっしゃるサンドイッチ構造で、第1ステージの右脳のひらめき、第2ステージのロジックでの検証・分析、第3ステージの腹落ちや感情移入、この一連の流れですね。

言い換えると、ひらめきがないところに、強力なロジックはない。法則や情報や知識を得ているだけで、ロジックとしてはあまり価値がないかもしれないと思いますね。

内田:なるほど。私がBCGで最初に習ったのが、情報にはインフォメーションとインサイト(洞察)があるということです。インフォメーションは事実をいろいろ教えてくれるけれども、インサイトはそこから、ビジネスのチャンスや人の動かし方など、何かを導き出すこと。

それにはある程度の情報が必要ですが、情報だけではほとんど価値がなく、簡単にリプレースされてしまう。それを本当にインサイトにまで高められると、ある種のユニークさになると、最初に叩き込まれました。

今の楠木さんの話では、どちらかというとインサイトは右脳的、インフォメーションは左脳や第2ステージの話だなと感じました。

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