「夫婦と子の家族」は今や3割弱しかいない現実 2040年には単身世帯の構成比が約4割になる

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今後大切になるのは、血縁や共住など1つの枠組みだけに縛られず、「所属するだけではないもう1つの安心の形」を作り上げることではないでしょうか。いつも一緒に同じメンバーで同じ場所にいるのではなく、必要に応じて、集まったり助け合ったりする関係性。

場所としての家が家族なのではなく、何かをするために考え方や価値観を同じくする者同士が巡り合えるネットワークも家族といえないでしょうか。私は、それを「接続するコミュニティ」と表現しています(参照:『1人でも「寂しくない」未婚者が増える背景』)。

家族に固執するのもよくない

一緒に暮らす家族を大事に思うことはもちろんすばらしいことですが、「家族だけしか信じられない」「家族以外は頼れない」という考えにとらわれすぎてはいけないと思います。家事も育児も「家族なんだからやって当然」と固執すると、夫婦が互いに相手の義務不履行をなじりあうという状況を生みます。

親の介護についても「家族が親の面倒を見て当然」という意識は、離職してまで介護を優先するという方向に向かわせ、結果本人の経済的破綻による親子共倒れに陥ります。かつて安心な囲いだった家族が、今や家族のみんなを縛り付ける鎖になっている。「家族を頼る」ことと「頼れるのは家族しかいない」というのはまったく違います。

奈良県橿原市にある「げんきカレー」という店では、お客が自分の会計に200円をプラスすると1枚チケットが発行されます。そのチケットを壁に貼ると、地域の子どもたちがそのチケットを利用してカレーを無料で食べることができるというシステムになっています。

チケットを買うお客も、食べてくれる子どもの笑顔を想像しやすいし、そのチケットを利用する子どもたちも、誰かの温もりを具体的に感じて感謝できます。リアルに顔を見合わせて助け合うことでなくても、自分のしたことが巡り巡って誰かのためになるという、これも「接続するコミュニティ」の1つの形ですし、人のつながりだと思います。

血がつながっていなくても、同じ屋根の下に住んでいなくても、いつも一緒にいなくてもいい。必要に応じて、場面に応じてつながり、自分のできる範囲で、助け合える。そんなお膳立てシステムこそが、今後は必要ではないでしょうか。

これからの新しい家族像、みなさんはどうお考えになりますか?

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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