日立の新型列車、「デザインの本場」で通用する? 日本とイタリアの技術者が協力して誕生

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ロックは、イタリアの技術者を中心としながら、日本からも技術者が派遣され、両者が持ち合わせていた技術や知見を出し合って、設計が進められた。その日本人技術者の1人、同社鉄道ビジネスユニット主管技師長の稲荷田聡氏に、設計に関わった際の話を聞いた。

ロックの設計に携わった日本人技師の1人、稲荷田聡氏(筆者撮影)
関係者向けのお披露目イベント終了後、ミラノ行きの快速として運行された1番列車(筆者撮影)

「とにかく、イタリア人は日本人よりこだわりが強く、話し合いにはとても苦労しました。こちらが説明しても、『なんでそうする必要がある? 我々はこうしたい』となかなか譲らない。しかも彼らは、いったん話し出すと止まらなくなる(苦笑)。日本サイドの意図を理解してもらうため、一つひとつ丁寧に理由を説明し、彼らが納得するまで話をしました」

イタリア人は確固たる自分たちの見解を持ち、なかなかの頑固者が多いようだが、一度決めたことはきちんと受け入れ、そのあとは物事が非常にスムーズに進んでいくという。一緒に仕事をし始めたばかりの頃は、こうした仕事の進め方の違いに苦労したが、3年半という時を経てイタリア人の仕事のスタイルがわかってきたため、現在は以前ほど苦労することはないという。

イタリアと日本の違い

イタリアと日本の車両は、同じ鉄道車両であっても、まったく違ったアプローチとなっている部分が多い。技術者の目から見て、どんな違いが気になったのだろうか。

ロックを前に笑顔を見せる日立レールS.p.AのCOO、ジュゼッペ・マリノ氏(筆者撮影)

「目に見える部分で、まず前面デザインは非常に気になりました。(車体端の縁取りの部分を指し)こういうデザインは、日本ではちょっと思いつかないですし、なんでこのデザインなんだろうと不思議に思いました。今でもそう思いますし、私たちは考えつかないですね(笑)」

デザインは、イタリア人の社内デザイナーが担当している。デザインの好みは国によって異なる部分なので、とくにデザインについては独自の哲学を持ち、こだわりがあってうるさいイタリア人であるから、同国内で走らせる車両であれば地元スタッフに一任するというのが正解と言える。ちなみにロックも含めて、今はデザインに3D-CADを取り入れている。

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