つくばエクスプレス「8両化」なぜ10年もかかる? 自慢の地下・高架線がネック、完了は2030年代

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TXがこれまで実施してきた主な混雑対策は列車の増発だ。2005年の開業時、1時間当たり16本だった朝ラッシュ時の本数は2007年に17本、2008年には20本に増発し、さらに2012年10月のダイヤ改正で22本に。現在はこの状態が続いているが、2020年春には新型車両5編成を追加投入して運行本数を最大25本にする。輸送力は約15%増え、混雑率は155%程度まで下がる見込みだ。

一方、沿線自治体は以前から抜本的な混雑緩和策として8両編成化を求めてきた。沿線8市区(つくば市・つくばみらい市・守谷市・柏市・流山市・三郷市・八潮市・荒川区)は2010年以降、東京駅への延伸と合わせて要望活動を展開。今年2月には足立区を加えた9市区長連盟で、8両化の実施可否や判断の時期などを問う質問状を提出した。

利用者数が全20駅中3位の流山おおたかの森駅、4位の南流山駅を抱える千葉県流山市の都市計画課担当者は「25本化で混雑が緩和されても、TXの利用者数は伸び続けているのですぐ元に戻ってしまうのではないかという心配がある」と、8両化を求めてきた理由を説明する。

インフラは8両化に対応

会社側も8両化を検討してこなかったわけではない。TXの施設はもともと8両化を考慮しており、全駅のホームや車両基地などは当初から延長できるスペースを確保。2010年発行の5周年記念誌「TX開業5周年の歩み」でも、8両化を輸送力増強の最大のポイントとして経営課題の1つに挙げている。実際に2008年にはホームの延伸設計も発注している。ただ、この時点では「可能性の検討はしておこうというレベル」(同社経営企画部の担当者)だったという。

秋葉原駅のホーム。朝ラッシュ時だけでなく昼も利用者は多い(撮影:大澤誠)

具体的な検討が始まったのは2020年春からの「25本化」プロジェクトが決定した2016年の秋以降。25本に増発した後の輸送力増強策を考える中で8両化計画が具体化したという。さらなる増発も不可能ではないものの、本数が増えると列車の遅れが増大するリスクが高まるため、「編成を延ばしたほうが混雑緩和につながる」(担当者)と考えられた。

事業化の決定に向け、とくに難しかったのは今後の利用者数の見極めだったという。会社側の推計では、TXの輸送人員のピークは1日当たりの利用者数が約42万人となる2030年前後。2035年も利用者数はほぼ変わらず、20年先も現状より多いと見込まれることから、工事に10年超かかっても混雑緩和に効果の高い8両化の実施を決めた。8両化により、混雑率は安定的に150%以下を維持できる見込みだ。

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