「仕事と結婚と育児」どれを諦めればいいのか 寿退社が不文律の会社で「予定外の妊娠」

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「戸籍を複雑にする」ことに「後ろめたさ」を感じるそうですが、昨今はそれぞれの事情で事実婚を選ぶ人も珍しくない時代です。いわゆる非嫡出子が気になるのでしたら彼の退職後の入籍で嫡出子になります。

また、子どもさんが分別のつく頃に、なぜそうなっているかを説明すれば、この時点では最良の責任ある選択をしてくれたと、感謝される判断だと思います。そして、そのような選択をする必要があった社会の不合理についても、問題意識を深めるきっかけになることでしょう。

会社がおかしいとはいえ、現実的なリスクは直視すべき

仕事と出産・家族同居の願いというごく自然な願いを同時にかなえることができないあなたのお立場のつらさ、痛いほどよくわかります。

先日、育休明け2日後の男性に転勤命令を出し、退職を余儀なくした大手化学メーカーに批判が殺到しました。また、三菱UFJモルガンスタンレーを、育児休暇をめぐって不当な扱いを受けたと訴えておられるグレン・ウッドさんの事例もメディアで大きく報道されました。

個別案件の事実は別として、育児休暇をめぐって不利益にさらされている人がそれだけ多い証拠ともとれる話題ですが、寿退社が不文律のあなたの会社での「掟破り」も、さらに大きなリスクが予想されます。会社がおかしいのに個人が諦めるのはおかしい、という憤りを重々承知で申し上げますが、このような現実的制約がある中で、お金を稼いで子どもを育てる必要があるのならば、坂上さんのご判断に一理あると思います。

すでに身ごもった命を中心に考えると、あなたが考えておられるように、あなたご自身の安定した収入源を手放すのはとてもリスクが大きいです。まして愛着ある内容の責任ある立場というやりがいのある仕事をいったん手放すと、それを取り戻せる機会はごく限られているのが現実です。

私の周囲で今はパートで働く女性の中には、育児のために泣く泣く正社員を辞めたことを後悔している人が何人もいます。専門を生かせない不満、やりがい、収入面、保証面など、年齢とともにその差は歴然としてきます。

もちろん、正社員と育児を両立できる支援体制の有無や、パートの気楽さが自分のライフスタイルに合っている人など、一概に言えることではありません。しかし坂上様の場合は、今のあなたご自身の職責がとてもやりがいがあって大好きな仕事であることを勘案しますと、ここは仕事の継続も優先するべきだと思いました。

ところであなたの場合、この妊娠がお互いにとって結婚に結びつくものか、慎重に確認し合う必要があります。まず、彼が結婚相手だという確信がないまま妊娠しました。彼の結婚の意思・覚悟は真実か、その環境でも心はつながる家族になるための努力を共有できる相手か、最初からシングルマザーとして育てるほうが賢明か、その見極めは、今の時点でも遅すぎることはありません。

坂上様の常識が、必ずしも彼の常識とは限りません。

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