日経平均2万3000円回復の可能性が出てきた 今のFRBの動きは1998年に酷似している?

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目下のところ、アメリカ景気の減速シナリオは現実味を増してきています。実際に、ニューヨーク連銀が経済成長率をリアルタイムで算出する「GDPナウ」は、7日時点で4~6月期の予想が1.0%増となっています。このことは、残り3週間あまりで同国のGDPが大幅に減速する事態を暗示しているといえるでしょう。

しかしながら私は、米中貿易戦争が年内にも終結を見せるようなことがあれば、1998年のシナリオの再来もありえるのではないかと考え始めているところです。世界のグローバル企業は生産・投資を控えているため、各国のPMIは数年ぶりの落ち込みを見せていますが、米中貿易戦争が沈静化していけば、その反動として生産・投資は数カ月で元の水準に戻ることが予想できます。

株式市場にしてもITバブルのような派手な相場にはならないものの、アメリカの株価が最高値を更新して、その後もある程度は上昇する可能性があります。

2018年末の段階で描いていた投資のシナリオは、『2019年後半に投資の大チャンスがやってくる』(1月31日)で申し上げたとおりですが、FRBの利上げ停止が意識され始めた過程では、投資のシナリオを柔軟に修正する必要がありました。

ですから、1~2月の私のレポートなどでは「景気後退や企業収益に対する懸念が上値を抑え、世界的な金融緩和への流れが下値を支えるボックス相場」に対応した戦略を提案しました。さらにブログ『経済を読む』では、「次の劇的な変化が起こるとすれば、夏場までに米中が合意するか、年内にFRBが利下げするかでしょう」と予告させていただきました。

長期金利の低下が、株式の魅力を高める

6月4日のパウエル議長の「景気拡大を持続させるため、適切な行動を取る(=利下げをする)」という発言を受けて、利下げが強く意識されている今となっては、新しい投資のシナリオを考える段階に入ってきたといえるでしょう。

FRBの利下げ(その後の各国の中央銀行の金融緩和も含めて)に加えて、米中貿易戦争の終結という好材料が追随するようになれば、NYダウのトリプルトップ(三尊天井)のチャートは覆され、最高値を更新することが視野に入ってくるからです。

アメリカの長期金利は7日に一時2.05%まで低下し、2018年11月と比べると優に1.0%超も下落しています。債券利回りの大幅な低下は、景気を下支えするだけでなく、株式の相対的な魅力を高めることにもなります。

FRBの利下げに過度に浮かれることはできないと思いながらも、多くの職業投資家は株式の比重を高めざるをえないというわけです。当然のことながら、上述の好材料がそろえば、日経平均も利下げによって多少の円高が進んだとしても、2019年の高値更新となる2万3000円程度まで上昇することは十分に考えられます。

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