北朝鮮の「食糧不足」はどこまで深刻なのか 人口の4割、1100万人の食糧が十分でない

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WFPによって提供された食糧を食べる北朝鮮の子どもたち。写真は2005年10月の撮影(写真:Gerald Bourke/WFP via Getty Images)

国際機関から食糧不足に陥っているとの報告がなされた、北朝鮮の厳しい内部事情が話題になっている。

北朝鮮は1990年代後半、相次ぐ自然災害と社会主義圏の崩壊で自国の貿易構造が崩壊。その結果、物資不足に陥り、30万人とも300万人とも言われる餓死者が発生した。「食糧不足」という発表に、北朝鮮自ら「苦難の行軍」と呼ぶほどの経済危機を思い浮かべることは、それほど不思議ではない。

人口の約4割が十分な食糧を得ていない

食糧不足を指摘したのは、国連機関である世界食糧計画(WFP)と国連食糧農業機関(FAO)だ。WFPは平壌に事務所を置き、定期的に農業の状況と援助物資などのモニタリングを行っている。

そのWFPが今年3~4月にかけて北朝鮮国内を調査した結果、北朝鮮の農業生産が過去10年で最低となり、人口2520万人のうち約4割に当たる1100万人程度が十分な食糧を得ていないと発表した。現状は餓死者が発生するほどの状況ではないとしながらも、「数カ月後には飢餓が訪れる恐れがあり、状況は非常に深刻だ」と指摘した。ここでの農業生産の中身は、コメやとうもろこし、大豆、じゃがいもなどを指す。

金正恩(キム・ジョンウン)政権となった2012年以降、穀物生産は400万トン台後半から500万トン台へと増加傾向にあった。一般的に、北朝鮮の国民全体に行き渡る十分な穀物生産の自給量は、550万トンから600万トンとされている。

北朝鮮のシンクタンク・朝鮮社会科学院経済研究所の李基成(リ・ギソン)教授は2018年8月の平壌での東洋経済の取材に対し、2017~2018年にかけては「農業生産は水不足、日照りなどの天候の影響で若干減少している」と述べた。李教授によれば、2016年の穀物生産量(精穀前基準)は589万1000トンだったのに対し、2017年は545万4000トンと減少したという。その一方、「科学的な営農を導入し、土地や種子の改良を通じて農業生産は増加基調にある」と強調していた。

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