日本と台湾、「チョコ」が結ぶ長く深い意外な縁 「森永村」で日本人がカカオをつくっていた

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1939(昭和14)年の写真。森永は台東と屏東でカカオ栽培に取り組んだ(画像提供:森永製菓)

しかし、台湾の地にカカオを根付かせるのは、たやすいことではなかった。カカオは東南アジアなどの世界各国から持ち込まれたが、とくに運搬は苦労の連続。カカオの実は腐りやすく、実の中から種を出したらなるべく早くまかないと発芽しない。台湾の冬の気温の低さもカカオの成長を妨げた。

明治も台湾でカカオ栽培

1939~1940(昭和14~15)年は、台湾の産地開発が盛んで、明治もカカオ栽培に取り組んだ。日本チョコレート・ココア協会が発行する『日本チョコレート工業史』によれば、昭和15年、明治は4カ所に開墾許可を得たが、やはり困難を極めた。「スマトラから運んだカカオを2000本植えても、冬の寒さと土地の乾燥のため、収穫はほぼなかった」という。

森永が苗木を植えた屏東は、カカオは根づいたものの、チョコレート製造に十分な収穫はされぬまま太平洋戦争が始まった。事業は中断を余儀なくされ、戦争は激化。カカオ豆は本土に送られることなく終戦を迎え、カカオ栽培の夢は破れてしまった。

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