10万円の「アート」の値段が5倍にもなる理由 日本人が知らない現代アート投資の実態

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──先ほど、アーティスト自身に柔軟に自分を変えていく才能が必要とおっしゃいましたが、つまりは市場価値を上げる努力を自分でせよ、ということですか? アーティストもビジネスマンたれと。

アーティストが起業家でコレクターが投資家、そう考えないとたぶんアーティストは食べていけなくなる。実際に起業家マインドを持っているアーティストはやっぱり伸びます。投資家は起業家がどれだけ強く事業を成功させたいかの意欲を見る。

アーティストも一緒で、自分が作りたいものと世間が望むものとを意識してやっていかないと、売れることはありません。それは村上隆も草間彌生も奈良美智も同じで、彼らは自分の好きに作って当たったのではなく、世の中が何を望んでいるかを察知して創作した部分が絶対あるはずです。ネットで情報が瞬時に拡散する社会で、いい作品には世界中がすぐ反応する。

日本はアジアの中でもアート後進国

──とにかく作品の数を見ようということで、近場の香港、上海、台北、シンガポールのアートフェアを挙げていますが、東京はなし?

「教養としてのアート 投資としてのアート」(徳光健治 著/クロスメディア・パブリッシング/1480円+税/239ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

「アートフェア東京」というのがありますが、現代アートに特化しておらず世界的トップギャラリーは出展していません。売れないというのもありますし。日本は富裕層が70歳以上に集中していて、どうしてもコンサバになる。それに対し、アメリカや中国ではお金を持っている層が30〜40代だったりするので、思考がすごく柔軟。自分が知らないもの、見たことないものに興味を持つ。逆に、見たことないから興味を持つ。そしてアートを立派な投資対象として見る。

マーケットが成長すると作家も潤い、それによって新しい文化が生まれる。日本はアジアの中でもアート後進国だし、このままではさらに衰退する可能性があります。アニメや漫画などサブカルが華々しい一方で、芸術としてのハイアート市場は成長していないのが現状。今やどん底状態だから、今のうちに日本の現代アートを買っておいたほうがいいよ、とあえて言います。われわれ業界の人間が、アートは資産になり、社会的貢献にもなりますよと訴えていかないといけない。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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