トヨタ、売上高30兆円超でも恐れる「敵」の正体 最大の脅威は「トヨタは大丈夫だと思うこと」

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生産の効率化も進めた。代表的なものが2012年に発表した新しい開発手法「TNGA」(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)だ。TNGAでは車のサイズやカテゴリーごとに車の基本構造であるプラットホーム(車台)を絞り込み、部品の共通化も進めることで、開発効率を引き上げるのが狙いだ。TNGAは2015年発売の4代目プリウスを皮切りに導入され、適用車種は順次拡大している。

2015~2019年の直近の4年間は「トヨタらしさ」を取り戻すべく、トヨタ生産方式(TPS)と呼ばれる生産ラインのムダを徹底的に排除する活動や、サプライヤーも一体になった原価低減活動を進めた。一方で工場新設も再開し、メキシコの新工場は今年稼働を計画する。2大市場の中国やアメリカでも生産能力の増強に動く。「意志ある踊り場」以降、ものづくりの手法を磨き続けたことで、今後控える生産能力の増強にスムーズに対応する力をつけられたことはトヨタの大きな収穫と言えるだろう。

ソフトバンクなど異業種との提携を深化

自動車の市場拡大にキャッチアップしていくこと以上に、トヨタがいま力を入れるのはCASEへの対応だ。「100年に一度の大変革の時代」「『勝つか負けるか』ではなく、まさに『生きるか死ぬか』」など豊田社長はこの数年危機感を露わにした言葉をいくつも口にしてきたが、CASEが念頭にある。

先進国では車に対する消費者の意識が「所有」から「利活用」へと急速に動き、カーシェアやライドシェアの市場が急拡大している。自動車産業の競争軸がサービス領域へとシフトすれば、車を開発・製造し、販売するという従来のビジネスモデルのままでは十分な収益を上げられなくなる。川上の部品メーカーや川下の販売店もCASEへの対応は必至だ。

トヨタは協業先のソフトバンクとともに、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を展開する新会社「モネ・テクノロジーズ」を合弁で設立。モビリティのプラットフォーム構築を急ピッチで進めている(撮影:大澤誠)

豊田社長は2018年1月には「自動車メーカーからモビリティカンパニーへの変革」を宣言。異業種も含めた「仲間づくり」をキーワードにソフトバンクやウーバー・テクノロジーズなどと提携を深めている。5月8日の決算会見では、将来のあるべき姿として、「モビリティサービス・プラットフォーマー」という言葉まで豊田社長の口から飛び出した。

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