「アドテクvs.広告マン」の仁義なき戦い テクノロジーの進化で変化を迫られる広告代理店

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――広告主と媒体社、双方にメリットのある仕組みですね。

しかし、本末転倒な事態が起こります。純広告の残り枠を使っていたはずのアドネットワークが純広告のパイを奪ってしまったのです。広告主は料金が安く、媒体社に問い合わせなくても、希望のタイミングですぐに掲載できるアドネットワークのほうが、より便利だと判断したためです。広告主としては、こちらにシフトするのは無理もないでしょう。しかし、媒体側からすると大安売りが常態化し、痛手となってしまいました。

その一方で、アドネットワークの課題も浮かび上がってきました。確かに、効率よく広告を表示してくれるシステムですが、どの媒体に広告を表示しているかまではわからず、ブラックボックス状態だったのです。

そこで、システムが自動的に選ぶのではなく、広告主も、自ら媒体を選びたいという要望が出てきました。それを実現する仕組みが「DSP(Demand Side Platform)」です。DSPは広告枠の買い付けから広告の配信、どのような人に見せるかというターゲティングまで一括して行うシステムのこと。広告主にとって効果が高く、さらにこのシステムを使って、広告枠を株式取引のようにリアルタイムで自由に入札できるようにもなりました。これが冒頭で述べたRTBというものです。「ほしい人はオークションで自由に買ってください」というわけです。

いま最もアツイのは”運用”ができる人材

菅原 健一(すがわら けんいち)●1977年生まれ。mediba CMO 兼 スケールアウト 取締役 CMO。モバイルインターネット黎明期から外資系クライアントのサイト企画・制作プロデューサーを務める。2013年1月スケールアウト入社、CMO就任。同年8月medibaのCMOに就任。同社のアドテクノロジー、マーケティングの強化を推進。海外アドテクノロジー企業の情報にも精通。

――アドネットワークとDSPはどのように使い分けられますか?

両者はトレードオフの関係ではなく、それぞれの特徴を生かして併用されています。アドネットワークは、すでにその商品を知っていたり、購入しようと検討している顧客にアプローチするのに適した手段です。効率のよい媒体を自動的に選んでくれます。ただ、アドネットワークで効果を追及していくと、似たような媒体への広告投入が集中し、新規顧客へのアプローチが難しくなってきます。

たとえば「新商品の認知度をアップさせたい」といった目的には合致しません。そこで、DSPを用いて今まで出稿をしたことがない新規サイトにも広告を配信したりするわけです。こうした、広告の目的によって、広告の配信手段や原稿を使い分けたり、併用するといった“運用”が大事になります。 

――かなり難易度の高い作業ではないでしょうか?

本当に難しいです。現在、業界で最も不足しているのも、運用を担当できる人材です。私が業界に足を踏み入れたきっかけも運用にあります。以前所属していた会社でオーディエンスターゲティングのコンサルをしていたのですが、相手先の企業に運用を担当できる人材がいなかったため、そのまま引き抜かれ、私自身が担当者になってしまいました(笑)。

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