「平成のJ-POP」が令和時代に迎える変化の大波 音楽P・亀田誠治「ヒットの基準も変わる」

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亀田誠治が椎名林檎のプロデューサーとして、またミリオンヒットを連発するプロデューサーとして、音楽業界のメインステージへ駆け上がっていく過程で、宇多田ヒカルという存在の大きさが数多くの挑戦のきっかけを生んでくれた。

亀田誠治(かめだ・せいじ)/音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツなど数多くのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、2012年閏日に解散。 第49回、第57回の日本レコード大賞では編曲賞を受賞。『亀田音楽専門学校(Eテレ)』などを通じて次世代へ音楽を伝えている(撮影:尾形文繁)

「宇多田さんがものすごい数字を連発しながらナンバーワンとして業界を引っ張ってくれていたので、僕らはライブや作品を通してオンリーワンとして奔放で革新的なトライアルができ、(CDを売るという)ビジネス以上にクリエーティブな作品作りに没頭できました。椎名林檎さんの作品ってロングテールなんですよ。

ナンバーワンにならないことで、逆に幅広く浸透し長続きをして、リリースから何年か経ってからもタイアップで楽曲が使われています。それは芯を食った音楽リスナーが大人になりクリエーターになったからでもあるんですよ。

愛されているヒットという意味では、オンリーワンを目指したことで長続きするといった新しい風を感じました」

“ロングテール”は、インターネットが当たり前になった現代の音楽定額サービス(ストリーミングによるサブスクリプションモデル)においても、重要な意味がある。

ヒットの基準も変わる

2019年2月に日本レコード協会が発表した音楽配信実績によれば、2018年の日本のデジタル音楽市場でストリーミングサービスの年間売り上げが初めてダウンロード売り上げを上回った。また、2018年12月からオリコンランキングがストリーミングでの再生回数を織り込んだ合算チャートをスタートしている。

ヒットの基準は「売れた枚数」だけでなく「聴かれた回数」も重要になったわけだが、1回の再生でレーベル(レコード会社)に入ってくる金額は、ごくわずか。ビジネスモデルとしては、大きな利益を短期間で一気に取りにいくというよりも、長い期間をかけて、どれだけ聴いてもらえるかを目指す方向に変わっていくのだろう。

ここでグローバルな視点から音楽業界を見てみる。ストリーミングからの収益が7割を超えたアメリカの音楽市場が、ここ数年続けて大幅なプラス成長を達成(全米レコード協会調べ)。1990年代末から右肩下がりで減少を続けてきた世界全体の音楽市場も、2018年の売上高が前年比9.7%増の約2.1兆円、2015年を境に4年連続で拡大していることを国際レコード産業連盟が発表している。

亀田誠治は、日本のストリーミングによる音楽環境(スウェーデン発のSpotifyや、国内ではAWAをはじめとした定額制音楽サービス)の浸透が、海外に比べて遅れている現状に危機感を募らせる。

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