東京のマンションがべらぼうに高くなった理由 新築価格は年収の13倍超と他府県を圧倒

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筆者が事務所を構える山手線・日暮里駅のすぐ近くでもマンションが建築中だ。渋谷や新宿には劣るが、駅の目の前なので繁華街の真っただ中となる。そこにマンションを建てればオフィスや店舗向けのビルと真っ向からバッティングする。

もちろんこれはかなり極端な例。すべての立地でバッティングするわけではない。しかし一部でもこのような状況があれば、商業用ビルやホテルとバッティングしてマンション価格が高くなる。

都内のマンション購入は共働きで定年まで働くのが前提

「東京のマンションが高いから結局何なんだ?」ということになるが、今後首都圏、とくに都内でマンションを買う人は夫婦ともに定年まで働き続けることがほぼ確定しているということだ。

7年ほど前に筆者がフィナンシャルプランナーとして開業した当初は、「ローンの返済にめどがついたら働き方をセーブしたい」「正社員を辞めて派遣やパートなどで働きたい」と話す奥さんは多かった。女性が定年まで働く感覚がまだ少なかったと思われる。

現在では、そういった話はとんと聞かなくなった。女性も定年まで働く前提でいる人が急激に増えた……というより途中で辞めるという感覚がない人がほとんどだ。短期間で常識が大きく変わったように思う。

筆者が見ているのはあくまで全体の一部でしかない。「高額なマンションを買えば仕事を辞められないだけでは?」という見方も当然あるだろう。「そんな高いマンションを買うなんて、楽しい生活を送るために働くのか、それとも仕事のために無理して高いマンションを買うのか、いったいどっちなんだ?」と感じた人もいるだろう。

これはニワトリが先か卵が先か、という話になってしまいそうだが、支出の優先順位は子ども(教育費)と住宅コストが多くの人にとって1位と2位だ。そして生活の優先順位で言えばそこに仕事も加わり、子どもは家族と言い換えても同じだろう。

家族、住宅、仕事と、3つの要素をどれも優先するのであれば便利な場所にあるマンションしか選択肢がないというケースも多い。そして住宅ローンを返済するために嫌々働いているのではなく、仕事にやりがいを感じて優先順位が高いからこそ、高いマンションを買ってでも両立を目指している、というのが実態だ。

中嶋 よしふみ FP、シェアーズカフェ・オンライン編集長

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なかじま よしふみ / Yoshihumi Nakajima

1979年生まれ。2011年にファイナンシャルプランナー(FP)のお店・シェアーズカフェを開業。翌年に開設した「シェアーズカフェのブログ」は5カ月で月間アクセス14万件を突破。現在は、各種士業や大学教授など、多数の専門家が書き手として参加するウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを編集長として運営。日経DUAL、アゴラ、Yahoo!ニュース個人、ハフポスト等で執筆中。その他多数の媒体で情報発信を行う。対面では新婚カップルやファミリー世帯向けにプライベートレッスン・セミナー・相談等のサービスを提供、とくに住宅購入のアドバイスを得意とする。生命保険の販売や住宅ローンの仲介等を一切行わず、FP本来のスタイルで営業中。お金よりも料理が好きなFP。

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