東京のマンションがべらぼうに高くなった理由 新築価格は年収の13倍超と他府県を圧倒

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現在は大手企業ほど産休・育休の制度が整って取得も容易になっている。大手企業で雇用が安定していて給料が高く産休・育休が取得しやすい……そんな状況であえて退職するメリットはほとんどない。30歳で結婚して退職した女性がもし60歳まで働いていたとすれば、と考えれば、平均年収300万円で考えても9000万円、400万円ならば1.2億円と、莫大な額に上る。これは節約では到底カバーできない額だ。共働きであることはそれだけで購買力が強いことを意味する。

共働きなら通勤時間も2倍

共働きの夫婦は通勤時間が2人分発生する。これも不動産価格に影響を与える要素になりうる。

専業主婦家庭ならば夫だけが働いて片道1時間でも往復で合計2時間だが、2人とも片道1時間の距離ならば2人の通勤時間は合計4時間となる。ここまで通勤に時間を取られると仕事と子育てとの両立が非常に厳しくなる。5~10分の差で保育園のお迎えに間に合うかどうか、という状況にある人は決して少なくないだろう。そんな人にとって通勤時間が30分か1時間かの違いは死活問題となる。

結果的に共働きの夫婦ほど便利な場所に住むインセンティブが生まれる。職住近接(しょくじゅうきんせつ)とも言うが、職場の近く、つまり多くの場合が都心部に近くなおかつ駅の近くを好む。

都心寄りで駅近くのマンションであれば当然価格は高くなる。不動産価格が全国平均の2倍近くで高止まりしている理由も、共働きの夫婦がギリギリ2人で払える額、これ以上は無理、という水準まで上がっているためと見ることもできる。

有楽町や大手町、渋谷、新宿など、オフィスの固まっている場所まで通勤が便利で乗り換えなしで行ける場所、30分程度で行ける場所、なおかつ駅近……となるとファミリータイプのマンションならば6000万円とか7000万円になっても決しておかしくはない。

もちろん、これだけ高価格のマンションを買うのは日本国内でもごく一部の人なので、「いくら便利と言っても高すぎないか?」と思う人も多いだろう。はっきり言って意味不明な価格水準に見えるかもしれない。

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