LA発「パンダエクスプレス」は日本に根付くか 3月に東京初上陸、6月には沖縄で4号店が開店

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一風堂は2008年にニューヨークに出店し、アメリカ初進出を遂げた。その後、アメリカ全土に一風堂のラーメンを広げようと、西海岸への進出を模索していたが、大きなハードルが待ち受けていた。同じ国とはいっても、アメリカでは州ごとに、食品衛生や労働、消防などの法律や条例などが違うことから、なかなか思うように店舗網を広げることができなかったのだ。

ボリューム感はかなりあるが、味は意外にもあっさりしている。うま味調味料のグルタミン酸を使っていないのが理由だという(記者撮影)

また、「カリフォルニアでは(出店する)通りが1つズレるだけで、まったくお客さんが来ない。現地の人が行きたいと思うような立地を見極めたうえで、出店する立地を選択する必要があった」(I&P RUNWAY JAPANの島津智明取締役)。

西海岸に進出するに際しては、現地の法律を熟知し土地勘のあるパートナーが欠かせない。そこで一風堂が声をかけたのが、カリフォルニア発で全米展開をしていたパンダエクスプレスだった。創業者同士が意気投合したこともあり、提携話は一気にまとまった。当初は一風堂の全米展開への布石となる西海岸進出でタッグを組んだわけだが、その際にパンダエクスプレスの創業者から、日本においてパンダエクスプレス展開の話が持ち上がり、一風堂を展開する力の源ホールディングスが日本での運営を担うことになったという。

ここにきてようやく出店拡大へ

今回、東京・お台場で3号店がオープンしたが、ラゾーナ川崎の再上陸1号店から3店舗目が開店するまでに、2年余りの時間を費やしている。出店スピードとしては遅い印象もあるが、島津取締役は「調理スペースや食材をストックする冷蔵庫や冷凍庫がある程度必要なことから、運営できる広さの物件を確保するのが難しかった」と語る。

テイクアウトは四角い箱に入れて持ち帰るのが特徴だ(記者撮影)

さらに、店内での調理工程が多いのもネックだ。厨房をのぞくと、1品1品を中華鍋で丁寧に調理していることから、それに対応できる人材を育成する必要がある。チェーン展開をするなら、店舗ごとの味のバラつきをなくすことが重要だ。

こうした点については、アメリカのパンダエクスプレス本部から担当者が定期的に来日し、味をチェックすることで味の均質化を図っているという。「2年以上の日本での経験からノウハウも蓄積され、ようやく出店拡大に舵を切ることができる」(島津取締役)。

すでに6月には沖縄で4号店のオープンが決定済み。その後も場所については明らかとなっていないが、年内に数店が開店する予定だという。日本の消費者にはなじみの薄いパンダエクスプレスは日本で根付くのか。オペレーションで一定の質を保ちながら、迅速な店舗網拡大ができるかがカギを握りそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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