中国発"黒船LCC"は国内線をこう攻める 「春秋航空日本」は地方からの風に乗れるか

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春秋航空の上海からの国際線は利用者の大半が中国人で、同社の旅行部門である春秋旅行社が主催するツアー参加者も多い。現在は茨城、高松、佐賀の各空港から貸し切りの観光バスを走らせ、地方空港を上手に活用している。

今回、春秋航空日本の国内線が就航することで、中国からの旅行者がまず高松や佐賀に入り、高松であれば四国や明石海峡大橋を越えて近畿圏で観光を、佐賀であれば九州で温泉などを楽しんだ後、春秋航空日本で成田へ向かい、東京観光を満喫し、上海への帰国便は茨城空港を利用するという流れを作り出すことができそうだ。

「地方」を味方につける

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使用機材はB737‐800。座席数は189(撮影:チャーリィ古庄)

3路線とも、基本的には個人利用客が中心となるだろう。しかし、高松、佐賀線においては、中国人観光客の国内移動だけで189席の機材を満杯にすることは難しい。経営を軌道に乗せるためには、日本人利用者を確保することが不可欠。日本人集客のキーワードは「地方」だ。

2010年の日本航空(JAL)経営破綻以降、地方空港は路線減少による空港閉鎖への危機感を強め、企業の国籍を問わず、苛烈な航空会社の誘致合戦を繰り広げてきた。特に同年に開港した茨城空港は、JAL、全日本空輸(ANA)双方が就航を見送る中、春秋航空の上海線就航が空港の知名度を大きく上げることになり、自治体も積極的にサポートしている。

高松や佐賀についても同様であり、茨城、香川、佐賀の各県民における春秋航空の知名度は既存の国内LCC3社より高い。こうした県民感情の追い風に乗って、香川県や佐賀県から東京へ安く旅行したい人をどれだけ確保できるかが、需要定着に大きく影響しそうだ。

成否を分けるポイントは、それだけではない。日本で航空会社を設立する場合、航空法の外資規制によって日本企業の出資比率が3分の2以上必要となる。春秋航空は中国の法人なので、自社の資金のみで会社を設立できない。そのため、春秋航空日本の株主構成は、親会社の春秋航空が出資上限の33%にとどまり、残りは日本企業となった。

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