ドラクエ無料アプリに学ぶ、「捨てる決断術」 1日100万ダウンロード!稼ぎたいなら「急がば回れ」

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スクエニは、まだ栄光の過去を超えてはいない

いま見てきた、スクエニのケースのように、「目先はリターンをあえて捨て、中長期で大きなリターンで得る」という決断の仕方は、実は我々の日常にもつながる。

目先の数字や成果を追うばかりで、皮肉にも中長期の成長を実現できない企業は実に多い。「かがんでこそ、高く飛べる」という言葉があるが、先を見据えて、「あえて目先はリターンを追わない」、という選択をすることは、なかなか難しい。

もっとも、今回のスクエア・エニックスの取り組みを手放しで評価するわけではない。拡大する新市場に対して、過去のコンテンツを横展開して儲けるというモデルそのものは、古いやり口だ。ドラクエだけで見ても、任天堂のスーパーファミコン、ゲームボーイ、Wiiなどの、様々なゲーム機で行ってきた手法の延長に過ぎない。

今回の配信は、目先のリターンを追わないことで一定の成果はあげた。しかし、実際にゲームをしてみると、操作性などには改善がほどこされているとはいえ、まだ「20年以上も前の成功コンテンツの使いまわし」の域を出ない。

統合後、業績が低迷しているスクエニ。結局は、ドラクエとFFシリーズが頼りであることには変わりがない。「最高の「物語」を提供することで、世界中の人々の幸福に貢献する」というのがスクエニの経営理念だが、過去のコンテンツを超える物語を、これからも提供できるだろうか。

今回のテーマが、2014年にむけ、読者が「未来につながる決断」をするための格好の教材となれば幸いだ。これを書き終えて、年末年始くらいは、愛する「スクエニ」のカモ、じゃなかった、「よき顧客」としてゲームにどっぷりつかろうと思う。

徳谷 智史 エッグフォワード 代表取締役

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とくや さとし / Satoshi Tokuya

京都大学経済学部卒業。企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略系コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用したHR-Tech分野の取り組みや、高校・大学などの教育機関支援にも携わる。趣味はハンドボール、世界放浪等。ご相談・取材・執筆・講演依頼はこちら

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