2014年の自動車業界はどうなる? 豊田章男・日本自動車工業会会長に聞く

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――中国および新興国市場をどう見ているか。

中国は、尖閣問題以降落ち込んだが、やっと戻ってきた段階。日中でそういう問題は時々起こるが、どのメーカーも現地で雇用を確保し、現地のパートナーと一緒に事業を展開している。政治問題にあまり影響を受けないように、影響は受けてもできるだけ軽微であるように関係各位で努力していきたい。

とよだ・あきお●1956年生まれ。84年トヨタ自動車入社、GMとの合弁会社NUMMI副社長などを経て、2009年社長就任(現任)。12年から日本自動車工業会会長

新興国については、これまで非常に台数が伸び、かつての先進国市場のようにモータリゼーションが起こっていた。しかし、モータリゼーションにはよい面と悪い面がある。先進国メーカーの役割として、交通事故や大気汚染などネガティブな側面は最小限にして、快適性などよい面を最大限にしたい。また燃費規制などで複雑になっている。これまでのように台数が伸びていくと楽観はしていない。

――米国市場の位置づけは?

日本メーカーにとって、最も重要で大きな影響があるのは米国市場だ。そこでよき企業市民になろう、雇用や輸出、車の生産・販売でしっかり貢献しようという気持ちでやっている。

グローバル企業として、どこの国の国益をどう考えればいいのかは難しい問題だが、ある意味では簡単だ。進出している国すべてで、よき企業市民として選ばれるように切磋琢磨し努力する。

持続的な成長が重要

――現状の為替水準をどう評価しているか

まず安定することを希望している。自動車産業の場合、円高だから円安だからと簡単に生産拠点を移転することはできない。

プラザ合意以降、長期的には円高基調で来ているが、ここ数年はあるレンジの中を乱高下してきた。そのレンジの下限を切ったのが近年の超円高だった。今は下限を少し上回った程度。ファンダメンタルズに近い為替レートで推移してほしい。

――競争力とよき企業市民、短期と長期、従業員や取引先と利益など相反する部分をどのように考え、どう優先順位をつけるのか。

(大事なのは)持続的な成長だ。私が何年社長をやるかわからないが、次の社長にバトンタッチしたころに今やっていることの成果が出る。トップに立つ人間は、そういうことを考える必要がある。企業というのも半永久的に生きていくのだから。

従業員にとっては人生を懸けているわけで、何十年かトヨタで過ごせてよかったな、と思える人生が送れることも必要だ。報酬もあるとは思うが、ここで成長できたとか、ここで学べたとか、生涯の友を得たというのも競争力の一つと思っている。

――特に株主市場は短期で評価をする傾向がある。

そういう投資家もいるが、中長期で見る株主もいる。どちらかというと、短期的に見る株主より、中長期的に支えていただく株主に対して、しっかりと説明したい。短期的な投資の銘柄としてトヨタは適さなくても、15年持ったらしっかりリターンがあるようにしていきたい。

(撮影:梅谷秀司)

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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