「C-HR」が苦戦?人気SUVが飽きられ始めた理由 好調だったSUVだが、直近では登録台数が減少

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さらに言えば、SUVのカテゴリーが曖昧に広がっていることも、人気をわかりにくくしている原因だ。例えばスズキハスラーは、SUVであり、同時に軽自動車にも含まれる。三菱デリカD:5も、SUVでありミニバンだ。

今はタイヤが収まるフェンダーのホイールアーチをブラックの樹脂で縁取り、ボディーの下側にアンダーガード風の樹脂パーツを装着すれば、何でもSUVに含まれてしまう。コンパクトなSUVを求めるユーザーが、ハスラーのような中間的な車種を買えば、SUVの人気が下がるわけだ。

三菱のディーラーからも「デリカD:5を新規で購入されるお客様は、アウトランダーなど三菱のSUVに加えて、エクストレイルやスバル・フォレスター、さらにBMW・X3など、いろいろなSUVに乗っている。デリカD:5はSUVからの乗り替えが多い」という声が聞かれた。

ハスラーやデリカD:5は、基本的には実用重視の軽自動車とミニバンだが、外観をSUVの手法で仕上げることにより、趣味性が加わって人気を高めた。

SUVのカテゴリーが今後、求められるもの

つまりSUVは、クルマをおいしくするスパイスだ。軽自動車からLサイズミニバンまで、SUVの外観がいろいろな車種の魅力を引き立てる。ハリアーやC-HRのような典型的なSUVの売れ行きは減っても、三菱eKクロスのような中間的な車種は増加傾向で、SUVのスパイスがいろいろな車種に拡散されるようになった。

スバルはかつてレガシィツーリングワゴンをベースにしたアウトバック、インプレッサスポーツをSUVにアレンジしたXVを成功させている。この手法が今後は、eKクロスのように幅広い車種に採用されていく。

これはSUVが新しい段階に踏み込んだことを意味するが、商品開発は簡単ではない。日産ノートCギアはサッパリ売れず、トヨタアクアXアーバンも、アクアクロスオーバーに改良されたが人気のグレードには至っていない。最低地上高(路面とボディーの最も低い部分との間隔)や外装パーツなど、外観のわずかな違いが明暗を分ける。

理屈では割り切れないところなので、どれだけユーザー目線に近づけるかが問われる。今のクルマの話題は電動化、自動運転、通信機能、シェアリングに及ぶが、商品として成功させるには、昔からの「カッコよさ」も大切だ。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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