業界再々編の号砲、損保3社統合の行方

業界再々編の号砲、損保3社統合の行方

新たな再編劇が始まる--業界2位の三井住友海上グループホールディングスと、あいおい損害保険(同4位)、ニッセイ同和損害保険(同6位)が、経営統合に向けて協議を進めていることが明らかになった。今回の統合交渉が実現すれば、3社合計の保険料収入は3兆円に迫る規模となり、業界トップの東京海上ホールディングスを一気に追い越す。三井住友海上の幹部は「これで世界のトッププレーヤーの仲間入りができる」と規模拡大に並々ならぬ意欲を見せる。

1998年に保険料率が自由化されてから、損保業界では資本力強化に向けた経営統合が相次ぎ、現在は大手7社で国内市場の9割を占める寡占市場となった。プレーヤー数が絞り込まれる中、ここに来てさらなる再編が持ち上がった背景には、事業環境が厳しさを増していることが挙げられる。特に深刻なのは、各社とも保険料収入の5割前後を占め、屋台骨になっている自動車保険の低迷だ。

 保険不振と運用悪化

減少続きの国内新車販売動向からも明らかなように、消費者のクルマ離れは歯止めがかからない。これまで右肩上がりを続けてきた自動車保有台数も、2007年度に戦後初めて減少へ転じた。08年はガソリン価格急騰と不況のあおりで、新車販売台数508万台と28年ぶりの低水準となった。日本自動車工業会は09年に500万台割れとなる見通しを出しており、市場回復は望むべくもない。また、普通車から軽自動車への乗り換え、無事故無違反割引の進捗による単価ダウンも影響し、どこも保険料収入が減少している。大手7社のうち保険料収入を増やしていたのは、トヨタ自動車が筆頭株主のあいおい損保だけ。だが、市場が冷え込む影響は避けられず、08年9月中間期にはマイナスに転じた。

 苦境はこれだけでない。自動車保険が落ち込む一方、近年は自然災害による保険金支払いがかさみ、多発した不払い問題の対策に伴うシステム強化費用も増加。保険本業の儲けを示す保険引受利益は、軒並み赤字に陥っている。各社ではそうした赤字を有価証券の売却によって穴埋めしてきたが、世界的な金融混乱による相場下落で運用環境も急速に悪化。08年9月中間期には多額の有価証券評価損計上を余儀なくされた。08年12月の日経平均終値が9000円を割ったため、評価損はさらに拡大しており、損保ジャパンと富士火災海上保険は通期で経常赤字に転落する見込みだ。

 これまで、業況が厳しくなる中でも、損保各社のトップは「単純な規模拡大だけの統合はやらない」と口をそろえて言ってきた。新たな収益源の育成を狙い、東京海上や三井住友などの大手グループは、海外展開を積極化している。だが、肝心の国内自動車保険市場の回復が見込めない状況にあって、合従連衡で収益拡大に活路を見いだそうとする動きは、必然の流れともいえる。経営統合に踏み切れば、損保本体の間接経費を削減できるなど一定の合理化効果は得られる。ただあくまでも、損保の収益の土台を成すのは販売代理店の存在だ。同じ商圏内でグループの代理店同士が契約獲得を争うような不毛な事態を避けるためにも、思い切った代理店の統廃合を推し進めるしか道はない。

勝ち残りに向けて三井住友海上が動いたことで、今後の動向が注目されるのが同規模の損保ジャパン(2002年に日産火災と安田火災の合併で発足)だ。三井住友海上への対抗心も強く、手をこまぬいて独走を許すとは考えにくい。大手7社の中で3社合流となれば、おのずと手を組む相手も限られてくる。

損保ジャパンの佐藤正敏社長は、日産火災と安田火災の合併後の社内融和に苦悩した経験から、08年夏の段階では「ほかにやることがありすぎる」と合併の可能性を否定していた。だが、市場環境のさらなる悪化が予想されるだけに、何らかの手を打つかもしれない。三井住友海上が嚆矢を放ち、再編の第2幕が切って落とされた。

(筑紫祐二 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済)

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