南場智子「日本の起業は目線が低い」
DeNA取締役ファウンダー、南場智子氏に聞く

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日本で起業はなせ少ないのか

──プラットフォーム側に日本企業はいませんね。

イノベーションは起業数に比例する。起業家を増やすべきだ。「グローバルアントレプレナーシップモニター」の調査では、「起業は面白いと思う」人の割合が、日本は54カ国中最下位。「失敗を恐れる」が7位。これが現状だ。

競争力は他国に対する提供価値であり日本が持つ存在価値だ。多くの課題を抱えて解決してきた経験を持つ日本は、世界の知的生産拠点になりうる。シリコンバレーの底力は、明日のフェイスブックやグーグルになると思えるベンチャーが次々と出てくるところにある。

──日本ではなぜ起業が少ないのでしょうか。

抜本的な施策が必要だ。日本の起業は目線が低い。質の高いベンチャーキャピタルが少ないからだ。日本では世界一なんか目指すな、地に足を着けろなどと指導されるが、米国では世界ナンバーワンを目指さない企業や人に投資は来ない。

シリコンバレーではインドや中国、シンガポールなど世界各国で生まれ育ち、その後渡米した移民たちと混成チームを組む。彼らは世界で試合をするために米国を拠点にしているだけ。狙う市場は最初からグローバル。全部シリコンバレーでやったら高コストとなれば、開発はインドで、デザインはシンガポールでと行動できる地盤を持っている。

だからこそ、世界中から起業家やエンジニア、投資家を日本に集めて、東京を知的生産拠点としてグローバルで競争的な都市にしたい。税金の優遇策などを大胆に行って、シリコンバレー的な起業家をサポートするシステムを作る必要がある。

それから教育。今までの日本の教育は戦後、加工貿易立国として決まったことをやるのには適していた。今や国を超えて活動するのが当たり前の時代に、自分の足で活躍する人材が生み出せるか。欧州は英語での読み書きに不自由がないので、日本はそうとう遅れてしまう。これからは日本語、英語に加えてプログラミング言語が必要だ。プログラミング言語は、アイデアを形にする武器であり、のりとはさみと一緒だ。

また、米国の小学校では毎日自分の好きなものについて語らせると聞く。自分の考えやビジョン、情熱を共有するのがリーダーシップのあり方だ。今の日本の教育や法制度で、リーダーシップがある人材が生まれるだろうか。抜本的な問題をテーブルに並べて考える1年にしたい。

2013年12月28日-2014年1月4日新春合併特大号

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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