中国排ガス規制で日系部品メーカーが笑う理由 省エネ関連部品・素材メーカーに需要見込み

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中国政府は厳しい基準を設けることで、すべての自動車メーカーにガソリン車の省エネ化を求めるだけでなく、地場自動車メーカーにはそのブランドの国際競争力向上を求める。

日米欧の自動車メーカーは「ユーロ」基準をベースとする「国6」基準に対応する取り組みを早期に始めたものの、地場自動車メーカーは技術開発の遅れから「国6」基準に対応する車種が少ない。「国6」標準の乗用車の生産台数は現在、月30数万台にすぎず、市場の需要に生産が追いつかない状況にある。

中国生態環境省が発表した2月末時点の「国6b」基準に適応した車種を見ると、基準をクリアしたのは65社、合計1175仕様だった。省エネ車技術で先行する日本車は、日産が110仕様で第2位となり、トヨタとホンダはともに80仕様を超えた。

一方、仕様数が全体の3割にすぎない地場自動車メーカーにとっては、構造が複雑で開発コストの高いエンジンや省エネ部品への新規参入に勝算を見いだせないため、外資系部品メーカーに対する依存は今後次第に高まることとなろう。

日系部品メーカー、省エネ分野で強い競争力

独ボッシュは無錫工場の排ガス後処理システムの生産能力を昨年3月から2.5倍に増強。アメリカ・テネコは蘇州工場で生産する「国6」基準に対応する省エネ部品を2020年に量産する計画だ。

省エネ車分野では日系部品メーカーが依然として強い競争力を見せている。三菱重工業とIHIは中国のターボチャージャー市場で高いシェアを維持し、日本ガイシは中国で排ガス浄化用セラミックスの生産を強化する。

またデンソーの燃料噴射装置や日本特殊陶業のセンサ、ケーヒンや三菱電機の排ガス再循環装置(EGR)など日本企業が省エネ関連の部品、素材を供給しており、日本企業は中国政府が牽引する省エネ化への潮流に欠かせない存在となっている。日系部品メーカーは今後も中国政府のNEV政策や規制の変更に留意しつつ、省エネ化を迫られる地場自動車メーカーの要望にマッチした製品を提供していくことが肝要だ。

湯 進 みずほ銀行ビジネスソリューション部 主任研究員、中央大学兼任教員、上海工程技術大学客員教授

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タン ジン / Tang Jin

みずほ銀行で自動車・エレクトロニック産業を中心とした中国の産業経済についての調査業務を経て、中国自動車業界のネットワークを活用した日系自動車関連の中国事業を支援。現場主義を掲げる産業エコノミストとして中国自動車産業の生の情報を継続的に発信。大学で日中産業経済の講義も行う。『中国のCASE革命 2035年のモビリティ未来図』(日本経済新聞出版、2021年)など著書・論文多数。(論考はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)

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