中国排ガス規制で日系部品メーカーが笑う理由 省エネ関連部品・素材メーカーに需要見込み

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しかし「国5」基準さえ満たさない自動車の台数は中国全体の78%に上る。このような状況のままで新基準を前倒しで適用することは、中国自動車業界に以下の3つの影響をもたらすものと考えられる。

1つ目の影響は、自動車メーカーの製造コストが増加することだ。「国6」基準が導入されると、適用期間が2年間にすぎない「国5」基準車の生産・販売・登録が全面的に禁止される。自動車メーカーが新基準をクリアするには、エンジン設計、電子制御システムおよび燃料噴射などの技術を向上させる必要がある。

一般に1台あたりの製造コスト増はエンジン車で約3万円、ディーゼル車で約7万円といわれている。だが中国自動車最大手、上海汽車の新車1台当たりの平均利益は約8万円(2018年)にすぎない。従って地場自動車メーカーはその製造コスト増加分を販売価格に転嫁せざるを得ず、価格競争力の低下が懸念される。

2つ目の影響は、新基準が中古車販売の阻害要因となることだ。今年7月以降、他地域から転入した中古車の登録を変更する際には大都市では「国6」基準を、中小都市では「国5」基準以上を満たすことが求められる。2018年の中国中古車販売台数は1382万台、そのうち地域をまたがる中古車取引の割合は2015年の19%から2018年に26%へと上昇した。すなわち当地に限る中古車(国6以下基準)の登録事情を勘案すれば、廃棄される中古車は年間400万台を超えると見込まれる。

新エネルギー車を購入する消費者増の見込み

3つ目の影響は、エンジン車を敬遠する消費者のNEV(新エネルギー車)シフトが進むことだ。すでに登録済みの車両は、当面新基準の適用を免れるものの、いずれはラッシュ時や特定道路における走行規制の対象となる恐れがある。またハイブリット(HV)を含む「国5」基準車を「国6」基準にグレードアップさせないという政策の実施が観測されている。そのとき中古車の残価率は大きく減少するはずだ。

さらに中国の産業政策はしばしば一貫性に欠けるため、今後「国6」基準よりさらに厳しい基準が導入されることも否定できない。こういう状況にあっては、エンジン車より排気基準対象外のNEVを購入する消費者が増加すると思われる。

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