最新版「大学就職率ランキング」ベスト100 文理別、地域別「就職に強い大学・学部」はどこか

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就職率が高い大学や学部はどこか?学生に対しての就職サポート体制が、どの程度厚いかチェックするのも大切(明治大学で、撮影:大澤 誠)

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アベノミクスで景気回復に大きな期待が寄せられる中、2013年の新卒大学生の就職状況は大幅に改善した。大学通信の調査による545大学の集計では、79.0%の就職率だった。リーマンショックで企業が採用を控え始める直前の2009年の就職率が80.9%だったから、その水準に戻りつつある。

ただ、回復しているといっても、手放しで見通しがいいといえる状況にはない。特に文系の就職率は落ち込んだままだ。不況になっても、企業は技術者の採用をあまり減らさなかったのに対して、事務系社員は削減してきた。その結果、今年の文系の就職率は78.0%で、それに対して理系は84.1%と6.1ポイントも理系が高くなった。

この就職率の差は、大学入試の学部志望動向に大きな影響を及ぼしている。受験生や保護者が、就職を重視した志望校選びを行っていることもあり、入試では理系の人気が高く、文系の人気が低い「理高文低」状態が続く。これは不況時によく見られる人気傾向ではあるが、文系の採用が増えないことには、この状況は変わりそうもない。

国家資格に結び付く医療・社会福祉系が強い

このように逆風が吹く文系だが、就職率の高い大学・学部も少なくない。ベスト100を見てほしい。

トップは新潟医療福祉大学・社会福祉で99.2%の高い値だった。以下、福山平成大学・福祉健康、岩手県立大学・社会福祉、東京福祉大学・社会福祉、岐阜聖徳学園大学・教育、岐阜女子大学・家政と続く。

社会福祉系学部の強さが目立つ。人材不足の分野ということもあり就職は好調で、上位100校中22校も出てくる。文系では数少ない国家資格と結び付いた学部だが、入試ではあまり人気がない。受験生は就職率が高いことは知っているが、さまざまなメディアで報道されているように、仕事がきついことから敬遠されているようだ。

また、教育の就職率も高い。団塊の世代の大量退職後、まだまだ大都市部で採用が多いことから就職率が高くなっている。入試でも人気がアップしているが、「これは公務員人気の表れ」と教育学部の教員が話す。法学系では公務員離れが受験者数に影響を及ぼしているが、「今は地方自治体の財政は厳しく採用を絞っているため公務員への道は険しくなる一方。ところが、教員は公立校に就職すれば地方公務員になる。教員採用は活発なこともあって教育学部の人気が高い」と説明する。

保育系も9位の桜花学園大学・保育、20位の東北福祉大学・子ども科、43位の大阪総合保育大学・児童保育など、就職率が高い。

これに対して法、経済など伝統的な文系学部は、苦戦を強いられている。法学部では一橋大学だけが29位に登場し、経済は名古屋大学、一橋大学、東北大学、大分大学、福井県立大学の国公立大5校しかランキングに出てこない。

一方、就職が好調な理系はどうなのか。トップは群馬パース大学・保健科で就職率は100%だ。同大学は保健科の単科大学で、看護と理学療法の2学科があり、今年、検査技術学科を新設した。2位の甲南女子大学・看護リハビリテーション学部も、看護と理学療法の2学科で構成されている。人材が不足している分野ということもあり、医療系学部の就職率の高さが際立つ。

3位以下は、京都薬科大学・薬、神戸薬科大学・薬、東北薬科大学・薬、武蔵野大学・薬など医療系の薬学部が並ぶ。薬学部は6年制に変わって昨年初めて卒業生が出た。3年ぶりの新卒薬剤師ということで、大変な売り手市場となり、薬学部の就職率は非常に高くなった。その売り手市場が今年も続いている。

薬学部のキャリア支援担当教員は「昨年あまりにも人気が高くなり、思ったように採用できなかった製薬会社、調剤薬局、病院などが多かったようで、今年も採用意欲が衰えず就職は好調」と話している。入試でも国家資格と結び付いた医療系学部の人気が高いが、これは受験生からすれば「就職の安全志向」ということだ。国家資格を取得して就活を有利に進めたいとの考えがある。

医療系の就職率の高さが際立つが、理工系も好調だ。9位に岡山大学・環境理工、15位に長岡技術科学大学・工・工学研究科、32位に富山県立大学・工、35位に兵庫県立大学・工、39位に福井大学・工と続く。上位はいずれも地方の国公立大というのが特徴だ。地方の国公立大では、企業の本社機能が大都市に集中しているため地理的にハンデがある。しかし、そのことから危機感が強く、大学のサポートが手厚く就職率が高いとみられる。このうち、福井大学は、卒業生1000人以上を対象とした大学全体の就職率が、3年連続で1位となっている。

地方の国公立大は安定した就職率

次に地域別に見ていこう。どこの地域でも文系は福祉系が強かった。唯一近畿では和歌山大学・観光がトップだった。ランキングに出てくる観光系は少なく、ほかでは関東で明海大学のホスピタリティ・ツーリズムが23位に入っているだけだ。20年に東京オリンピック開催が決まったことで、今後、観光系は採用枠が広がる可能性もあり、受験生の人気を集めそうだ。

また、経済学部は地域別に見ても、国公立大しか出てこない。中国・四国で見ると、山口大学、下関市立大学、香川大学の3校だ。国公立大の就職率が高いのは、「国公立大の学生は入試で5教科7科目を学んできているので、それが就職試験でプラスに働いているからでは」とある就活コンサルタントは指摘する。

次に地域別の理系を見ると、中国・四国を除き、どの地域でも医療系がトップだった。地域別に医療系学部の設置数に差があるため、ランキング全体を比べると、医療系の強い地域と弱い地域に分かれる。関東では上位25校中20校が薬、看護などの医療系だった。逆に北海道・東北では医療系は東北薬科大学、名寄市立大学、北海道医療大学の3校だけで理工系、農学系が強かった。

就職を考えながら、大学・学部を選ぶことは当たり前になってきている。大学の支援なくしては、就活もままならないのが今の多くの大学生だ。就職率、就職先の検討も大切だが、大学の就職へのサポートをチェックしておくことも必要になってきているといえそうだ。

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