トランプ大統領が2020年に向け打つ驚愕の一手 2月15日前後に戦略の一端が見える可能性も

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常用していた痛み止め薬を医者によって断たれた患者は、想像以上の禁断症状に苦しんだ。その様子を見て、医者は状況次第で痛み止めの再投与を示唆、それで患者は安心した。だがそれは医者の本心ではない。患者の忍耐力に沿ってアメと鞭を使い分けながら、時間をかけて治療を続けるドラマなのだ。面白いのは、急に元気になった患者(市場の一部)が、「やはりアメリカ経済は堅調だ」と言い出したことである。堅調という言葉には違和感がある。心身ともに本当に健康なら、そもそも痛み止めは必要ない。

いずれにしても、世界経済を牽引するのが先進国の消費とアジアの製造である以上(中国はその両方と言ってよい)、先進国の中央銀行が、購買力を維持するために流動性を投下するのは自然だ。ただし中央銀行の本来の目的は、ほとんどの中央銀行ではインフレなき安定成長のはずだ。

もし何らかの理由で悪いインフレが起こるとお手上げである(大災害や戦争など)。そして中央銀行が供給した流動性による富があまりにも不公平だと、社会には変動が起きる。前回の記事アメリカの「バブル崩壊後」に起きる「大転換」では、アメリカの最初の中央銀行バブルの崩壊は1929年だったことに触れた。だが世界をみると、中央銀行による最初の株式相場のバブルは、1720年の英国の「南海バブル」と、その前年からのフランスの「ミシシッピバブル」だ。そして重要なポイントは、この2つのバブル崩壊後の、それぞれの国の方向性の違いだった。

アメリカの「リーマン後」は「仏バブル崩壊後」に近い

最初に確認しておくが、歴史考察はナラテイブ(物語)である。それを踏まえて言うと、英国では国王を筆頭に、南海バブルに参加した人々は全員が責任を分かち合ったとされる。そしてこの失敗を糧に、英国は現在につながる資本主義の原型を築いたとされる。

一方、ミシシッピバブルでは、フランスは失敗の責任を特定の個人(スコットランドの実業家ジョン・ローン)に押し付け、バブルの恩恵を受けた金持ち貴族やブルジョア層は、相応の責任をとらなかったとされる。そして最終的には、その結果として、革命が起こったというのが、英国から見た一つの歴史観である。フランスがこの歴史感に同意するかは知らない。だが2008年のリーマンショック後のアメリカは、アングロアメリカンの同盟国の英国ではなく、あきらかにフランスに近い。これはナラテイブではなく、アメリカ在住の筆者の目で確認した事実である。

2008年の金融危機では、アメリカは金融資産を持つ金持ちには、税金やFEDの流動性で社会主義的な救済が施され、一方で労働者には、ダボス的なグローバリゼーションの市場原理が適用された。

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