4月に誕生、世界鉄鋼3位「日本製鉄」の実力度 世界的な「鉄冷え再来」をどう乗り切るか?

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ライバルのアルセロール・ミタルと組むのは「製鉄所を買収するにも、一から作るにも多額の資金が必要。協力して資金負担を軽減するのが一つのやり方だ。アルセロール・ミタルとは米国でも合弁を手掛けている。今や一番信頼できるパートナーだ」と進藤社長は語る。

現地企業を買収するのは、投資を抑制するためだけではない。急速に市場が拡大している新興国の政府は、現地で高炉から鉄を作り、加工する「自国産化」を進めているからだ。

「インドなど新興国に経営資源を注ぎ込む」と意気込む橋本新社長(撮影:風間仁一郎)

橋本氏も「(世界の鉄鋼業界における)明確なトレンドは自国産化の流れ。いち早く自国産化を達成した国は保護主義に向かう。成長するには(その国の)インサイダーになる必要がある」と解説する。エッサール社買収はそのためだ。そのうえで、「インドなど新興国市場は確実に伸びる。需要の伸びるところに私どもの経営資源を注ぎ込んで勝ち抜き、成長していく」と言い切る。

国際的な「鉄冷え」をどう払拭?

もともと進藤社長は2014年4月の就任時に、「経営統合の完遂」と「海外展開の拡大」の2点を掲げた。旧新日鉄、旧住友金属工業の統合は果たしたものの、後者については、鉄冷えで守りの経営を余儀なくされた。それだけに昨年相次いだ拡大再編策は、雌伏の時を抜けて、攻めに転じた動きだ。

今のところ、国内の鉄鋼需要は2020年の東京五輪・パラリンピックや首都圏再開発などのインフラ需要に支えられ、建築向けや自動車向けに好調が続いている。それだけに、橋本新社長の実行力への期待は高まる。 

とはいえ、日本製鉄と新社長の行く手が順風満帆とは言えない。海外は中国の景気減速や米中貿易摩擦を受けて、中国の安価な鋼材が出回り、国際市況を崩す「鉄冷え再来」への不安感が日々強まっている。そうした不安を端的に表すのが新日鉄住金の株価。2018年1月に3132円と2年半ぶりの高値をつけて以来、一貫して弱含んで推移している。橋本新社長は、そうした懸念を実行力で払拭する役目を負うことにもなる。

鶴見 昌憲 東洋経済 記者

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つるみ まさのり / Masanori Tsurumi

紙パルプ、印刷会社等を担当

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