日米を襲う「債券バブル崩壊」の恐ろしい結末 株の下落の次に何が待ち受けているのか?

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そして、国内の政敵から、財政問題という資本主義の正論で攻め立てられるトランプ大統領の苦境を静かに眺めているのが中国だろう。これまで市場のボラテイリテイの主役は米中貿易戦争だった。実態を確認すると、10月末の最新データでは、中国からの輸入は過去最高を更新して約370億ドル、アメリカ企業が収めた関税は60億ドルだ。

この数値を見る限り、市場が騒ぐほど米中貿易戦争は実体経済に影響を与えていない。むしろアメリカにとって脅威なのは、中国が自国の金融市場を徐々に世界標準へ変貌させていることだろう。

アメリカに本社を置きながら世界を股にかける実質無国籍の国際金融筋は、その中国の変貌を手伝っている2018年第3四半期末のデータでは、外国人投資家による中国人民元建ての株や債券への投資金額はこの1年で3.7倍へ拡大した(1220億ドルから4620億ドル)。

債券市場の拡大に力を入れる中国

そしてそこでも鍵を握るのは債券市場だ。なぜなら、中国のGDPや株式時価総額は既に日本を抜いているが、債券市場はまだ日本よりも小さい。伸びしろは債券である。中国政府は自国通貨建ての債券市場拡大を促進するため、外国の格付け機関とも協調しつつ、中国市場向けの「独自基準の導入」へ向かっている。

これらの背景にあるのは言うまでもなく、2016年にIMFが中国人民元を通貨バスケットに導入したことだ。その結果、各国の中央銀行は、準備金の中で中国元をバスケット比率である10.9%まで高める必然が生まれた。

呼応するように、世界の機関投資家が使う代表的指標の「The Bloomberg Barclays Global Aggregate Index」や「The JPMorgan Government Bond Index」は、インデックスへの中国債券の組み入れを発表した。これでベンチマーク投資を行う世界の債券投資家は、半ば強制的に中国債券を組み入れていく。

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