日米を襲う「債券バブル崩壊」の恐ろしい結末 株の下落の次に何が待ち受けているのか?

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そして本が公開されると、いわゆる反トランプの民主党系リベラルエリートに動きが見られた。財政拡大論者でノーベル賞を受賞した経済学者のポール・クルーグマン氏は、2016年の大統領選挙では学術系の意見を取りまとめて大々的に反トランプ運動を主導した。

しかしヒラリー・クリントン候補の敗北後、メディアへの露出を控えていた。ところが10月頃からあちこちに登場、ダリオ氏と同じ論旨の警告を始めた。そして、最も衝撃だったのが前FRB議長のジャネット・イエレン氏だ。彼女は退任前のFOMCで、自分が生きている間にリーマンショックのような金融危機は2度とこないと断言した。ところが、彼女も10月から豹変。パウエル議長の金利引き上げを批判するトランプ大統領に対し、FEDが金利を引き上げなければならないとしたら、それはトランプ大統領の無秩序な財政拡大政策のせいであり、このままでは再び金融危機が来ると警告した。

アメリカで「ポリティカルマクロ」を踏まえ相場を見てきた専門家の一人として、ダリオ氏の愛国心とは別に、その影響力を利用する勢力があることは承知している。今回は民主党系のエリートがダリオ氏に便乗した。彼らは2017年のトランプラリーを忸怩たる思いで眺めていた。

株価下落でトランプ大統領を追いこみたいエリート層

彼らがトランプ大統領の政策で、アメリカの未来が壊れることを心配しているのは否定しない。だがポリティカルマクロでは、額面通り考えてはならない。株の下落をチャンスと考え、政治的にトランプ政権を追い込みたい思惑は、政治家だけでなく、二極化したエリート層にもある。

興味深いのは、ブルッキングス研究所に近いイエレン氏やクルーグマン氏が態度を変えると、本来、財政緊縮派で金融保守の共和党系金融エリートも態度を反転させたことだ。2010年、バーネンキ議長のQE2(量的金融緩和第2弾)に反対しFRBを辞めたケビン・ウォルシュ氏は、トランプ政権下のFRB議長の最有力候補だった。

だが、あまりにもタカ派過ぎるということで、上院での承認の見込みがたたず、結果的にパウエル議長に落ち着いた。ところが、12月のFOMCで利上げ反対を唱えたのは、なんとこのウオルシュ氏やローレンス・リンゼー氏など、往年の共和党のタカ派FRB関係者たちだった。彼らが利上げ停止を訴えたことで、FOMC直前にその期待が市場に生まれた。ただ、結果は裏目に出た。失望からの株の下落は、エコノミストの理論も、政治の力学の中では「フリップフロップする」(=結局、ゼロ査定になってしまった)という戒めになった。

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