子育て世代の入居希望が絶えない賃貸の正体 希少性の追求で異彩を放つ旭化成ホームズ

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入居者(希望者)は子育てを入居者全体で行うことなどを定めた「子育てクレド」と呼ばれる憲章に賛同することが求められる点もほかにはない特徴だ。運営の点でも、グループ会社の旭化成不動産レジデンスがかかわる形で、入居者懇親会、季節ごとのイベントも開催されている。

このほか、子育ての相談ごとに対応するため子育て支援事業を展開する「お母さん大学」などのサポートも受けられる。これらの工夫は、入居者が住んでみたいと感じる「価値」を確実に生み出している。

JR荻窪駅・西荻窪駅から徒歩約15分。利便性が高いとはいいづらい立地でありながら月額家賃は15万5000円~16万6000円。駅前の2LDK物件と同等の家賃設定だが、入居待ちが続いているという。

自宅と介護施設のすき間を狙う

旭化成ホームズでは子育て世帯向けの「母力」のほか、高齢者向けの「ヘーベルヴィレッジ」、ペット共生タイプの「プラスわん・プラスにゃん」といった“コミュニティ賃貸”と呼ばれる商品群をラインナップしている。

共通する点は特徴付け、希少性の追求だ。たとえば、「ヘーベルヴィレッジ」は現在、高齢者向け住宅の主流となっている有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)とは異なる、元気なシニア入居者に特化したものである。

後者は食事サービスや医療機関との提携など手厚いサービス提供され安心感がある一方、要介護入居者を対象とした介護やケアを前提としたもので、元気なシニア世代によっては入居しづらい雰囲気がある。高額な入居一時金が発生する有料老人ホームはなおさらだ。

国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会とりまとめ」によると、サ高住の住戸面積は25㎡未満が約8割で、各戸に風呂やキッチンがないものも多い。要するに、質が高い物件はそれほど多くないわけだ。

それに対し、前者は住戸の広さや設備のグレードの高さ、適度なサービスで後者との差別化を図っている。東京・杉並区にある「ヘーベルヴィレッジ杉並井草」(3階建て、26戸、2018年3月竣工)は、分譲マンション並みの設備仕様で、間取りは1LDK・2LDK(46.69㎡~62.07㎡)で構成されている。

高齢者向け住宅や介護施設の雰囲気がまったく感じられない「ヘーベルヴィレッジ杉並井草」(筆者撮影)

一見すると高級な賃貸住宅という趣で、内外観ともシニア向けとは感じられない。ただ、緊急対応や生活相談、家族への情報報告、連携医療機関の紹介などの最低限の「見守りサービス」を提供しているほか、入居者交流を促す集いの機会も用意しているという。

旭化成ホームズによると、これまでに供給した「ヘーベルヴィレッジ」の入居者は平均年齢が76歳で、サ高住の80歳代と比べ若いという。「ヘーベルヴィレッジ」は、自宅から介護施設へ転居する前段階という、独特なポジショニングを確立していると考えられそうだ。

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