深圳の「薬の自販機&遠隔診療機」が凄すぎる 中国のIT進化は伝統産業にも浸透している

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生薬の栽培、病院、地方の「康美健康城」(康美の病院、リハビリセンター、漢方薬展示センター、学校などがあるスマート医療、総合的な健康を目指す地域)、生薬の取引所から養生レストラン(中国の養生思想にもとづいた食材でメニューを作る)まで、幅広くビジネスを展開しており、中国の国内初といわれる漢方医療の全過程を実現できるプラットフォームを開発した。

康美薬業では漢方医薬のプラットフォームを紹介してもらった(筆者撮影)

康美薬業の2017年の純利益は41億元(約681億円)で、日本漢方薬メーカー大手・ツムラ(2018年3月期は145億円)の約4倍だ。薬の自販機の機能は分かりやすいが、「薬ひょうたん」は何なのかわかりにくい。

そこで、康美薬業を訪問した。

「薬ひょうたん」は、実は遠隔診療機だった。

具体的には、日本のマイナンバーカードに相当する身分証明書を挿入すると、対応可能な医師のリストが表示される。医師を選ぶと、オンラインでその医師とビデオ通話になる。自分の症状を言い、医師に診察してもらい、処方箋を出してもらう(「薬ひょうたん」が印刷する)。

隣の自販機に在庫がある薬であれば、そのまま薬が出てくる。自販機にない薬や煎じる漢方薬の場合、オーダーがそのまま工場まで送信され、患者の指定するところに届けられる仕組みだ。これは前述のプラットフォームにより実現されている。康美薬業は、「夜間急病の人や医療環境が未発達な地域にいる人に、すぐにでも医師に診てもらえるように、このシステムを研究開発した」という。

漢方薬メーカーっていちばん古臭いはずなのに

漢方薬は中国語で「中薬」と呼ばれ、中国では人々の日常生活に浸透している。2016年の中薬生産総額は8,653.4億元(約14.7兆円)に達している。全薬品生産総額でみれば中薬だけで3分の1も占めている。 

中国政府は、「健康中国2030」計画を2016年8月に発表し、高齢社会、健康寿命伸長のため、中薬を推進している。中国人の多くは、西洋薬は副作用が多く、身体への負担が多いと思っており、身体の内から健康を補助してくれる中薬を好む。

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