巻頭対談(WEB限定版)
日本のリーダーが世界で戦うために必要なこと
岡田武史(サッカー元日本代表監督)×近藤聡(デロイト トーマツ コンサルティング 代表取締役社長 パートナー)
「そうは言っても」を打破するには?
近藤 今、日本企業は大きな岐路に立たされています。国内では少子高齢化やエネルギー問題などを抱え、なかなか利益を上げることができず、海外展開する企業も増えています。でも、そこには海外の競合がいるので簡単にはいかない。たとえば何か新しいものを作っても、新興国の企業にすぐまねされ、追いつかれてしまう。こうした状況から抜け出すには、従来のやり方に縛られていては駄目で、「自ら変化を起こす」「自分で新しくゲームのルールを形成する」ことが必要だと感じています。
岡田 これからの時代、「今までこうだった」と過去の延長線上で考えるのはナンセンスだと思います。おそらく、同じ稼ぎ方で安定した長期的収入を得られる、などということは、これからはもうないんじゃないでしょうか。僕たちも、ひとつのスタイルを見つけて、その後の試合もそれでずっとうまくいくかといったら、いかないんです。毎回、相手を研究して、今いる選手でどう戦うかを考えていく。孫子の兵法にある「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という世界ですね。
企業活動についても、これまでのように「この企業はこうやって利益を生み出していく」という風にはこの先はいかないという気が、素人ながらしているんです。
近藤 その点については、まさに仰るとおりです。
岡田 もうひとつ思うのは、そもそも「今まで」が何を指すのかもう一度考えてみる必要があるんじゃないかなと。地球が誕生して46億年、人類が誕生したのが20万年前、そして産業革命が起こって200年です。仮に46億年を460mとすると、人類誕生から2cm、産業革命からはわずか0.02mmです。と考えると「今まで」とはほんのわずかな期間で、そのわずかな期間のことを今後も守り続けるというのは、どう考えてもおかしい。
先日、懇意にしている経営者の方から聞いた話ですが、海外で開かれた経営者が集まる会議で、一番最初のスピーチが環境問題についてだったそうです。これまでそんなことはありえなかったと。さらにそれに続くスピーチも同じようなテーマについてだったそうです。「これは変わるかもしれないよ」とおっしゃっていました。