エアコンが赤字転落、津賀パナソニックの不安 上期決算は最高益も新たな課題が浮上

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中村―大坪体制を一掃

「経営の意思決定のスピードが速まった」。社内外からは、津賀体制について、そう評価する声が聞こえる。背景の一つにあるのは、今春からの事業部制への移行である。

事業部制は重複や無駄が多いとして中村社長時代に廃止されたが、津賀社長は「課題を見えやすくする」狙いで、復活させた。ヴィコ社買収も、「事業単位で案件を見るから、決断が早かった」(同社社員)との声が上がる。

10月には、この時期としては異例の役員人事を断行。懐刀の本間哲朗・経営企画グループマネジャーを役員に登用するなど、中村─大坪体制から名実共に津賀体制へと一新し、順調な滑り出しを見せている。

ただ、津賀社長は現状を楽観視しているわけではない。「構造改革のヤマ場は過ぎていない」。むしろ、危機モードが続いていることを強調する。

事実、構造改革は始まりの段階にすぎない。中計では14年度までの「赤字事業の止血」を重点施策に掲げ、テレビ・パネルや半導体、携帯電話、回路基板、光事業を赤字事業としてやり玉に挙げた。

そのうち携帯電話については、9月末に国内の個人向けスマートフォン事業からの撤退を発表した。プラズマパネルも来年3月末に生産を停止する。「プラズマは1000億円の赤字を200億円にまで絞ったが、それを黒字に転換する施策が見えず、撤退の最終決断をした」(津賀社長)。

本格的な配置転換や人員縮小はこれからだ。パナソニックは今期1700億円の構造改革費用を用意しているが、上期に使ったのは約100億円。残りの1600億円分の構造改革費用が、下期に使われる。

プラズマテレビの生産を担う子会社パナソニックプラズマディスプレイ(PPD)の尼崎工場では、年内にも約250人の生え抜き社員を対象に、早期退職を募集する予定だ。PPDはパナソニックの子会社で本社とは雇用形態が異なっており、応じない社員についても、3月には雇用契約が終了するという。

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