八方ふさがり「由利高原鉄道」資金集め大作戦 寄付金殺到の立役者は「こけし駅長」だった

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まずは駅から美術館へのアクセス手段だ。これについては、列車に接続するシャトルバスを同館が走らせてくれることになった。これで鮎川駅は「最寄り駅」を名乗れることになった。

だが、問題は列車とバスの接続だった。列車が1~2時間に1本しかない同線だけに、上下列車の乗客をまとめて送迎したい。そうすると、たとえば羽後本荘駅を10時43分に発車する「おばこ」と呼ばれる絣の着物姿のアテンダントが乗務する「まごころ列車」の乗客は、10時55分に鮎川駅に着いたあと、対向列車が到着する11時12分まで送迎バスの発車待ちをすることになる。

実際には、列車到着からシャトルバス発車までに5分の余裕を設けているので、バスの発車時刻は11時17分だ。まごころ列車の鮎川駅到着からなんと22分も経っている。これでは、期待してきた家族連れの気持ちが萎えてしまいそうだ。

待合室設置へクラウドファンディング

そこで、駅前の自転車置き場を子ども用の待合室に改装するという案が生まれた。デザインは美術館のデザイナーである砂田光紀さんに依頼し、木をふんだんに使った建物にしようというものだ。しかし、アイデアだけでは費用が捻出できない。

新観光施設誕生を受けて、鮎川駅前広場には「おもちゃまちあいしつ・こどもハウス」ができ、施設までのシャトルバスの運行もはじまった(筆者撮影)

春田社長はクラウドファンディングに賭けてみることにした。由利高原鉄道は今年2月1日、目標金額を300万円に設定して、クラウドファンディング大手のReadyforで寄付金を募った。募集締切日は4月24日とした。

募集開始から約1カ月となる3月4日には122人から140万7000円が集まり、まずまずの滑り出しとなった。その後一時期は伸び悩んだものの、3月31日には寄付金が230万2000円に達し、4月8日には308万2000円と目標を突破することができた。その後も寄付申込みは続き、最終的には370人から528万5000円もの寄付金が集まった。内訳は次の通りだ。

3000円(85口):感謝状
1万円(333口) :こけし駅長室・鳥海山木のおもちゃ美術館入館券
3万円(15口) :こけし駅長室・3館共通入館券・カフェ割引券
5万円(3口)  
 こけし駅長室・3館共通入館券・カフェ割引券・フォレスタ鳥海宿泊割引券
10万円(5口)
 こけし駅長室・3館共通入館券・カフェ割引券・フォレスタ鳥海宿泊割引券・ヘッドマーク 
30万円(2口)
 こけし駅長室・3館共通入館券・カフェ割引券・フォレスタ鳥海宿泊割引券・貸切列車1往復

1万円が最多の333口となっている。筆者もそのうちの1口を申し込んだ。

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