部下を自慢するリーダーが「最強」である理由 人は「建前では動かない」という重要な真理

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私は、「人間心理を無視して人を動かすことはできない」と考えています。心理といっても、「心理学」ではありません。重要なのは、「実践心理」です。

私がキャバクラでモテるのは(笑)、キャストの心理がわかるからです。モテるコミュニケーションをしていたからです(ちなみに、65歳で夜の街は卒業しています)。

以前、私はある社長から、

「どんなスーツを着ているんですか?」と質問をされたことがあります。「小山さんと同じスーツを着たら、私もキャバクラでモテるんじゃないかと思って(笑)」と。

そこで私は、あきれながら、こう答えました。

「あなたは、スーツを着ているときに女性にモテたいのですか? それとも、スーツを脱いでいるときに、モテたいのですか? どっちですか?」

「あなたは、権力、地位、名誉、名声で人を縛ろうとしている。そうではなくて、すべてを脱ぎ捨てたときの『その人自身の魅力』で惹き付けないといけない。魅力的な人間になれば、追っかけなくても女性は寄ってくるし、お客様も寄ってくるし、社員も動くようになる。モテたいと思っているうちは、モテない」

その後、その社長はこんな話をしてくださっています。

「小山さんの特徴は何かというと、1つは『相手の本音をわかってあげる力』にあると私は思います。小山さんが人に慕われるのは、『自分のことをわかってくれる』からではないでしょうか。

人間は、本音で動く生き物です。建前では動かない。人間心理に長けている小山さんはそのことがよくわかっているから、社員の本音を探ることに、ものすごい労力をかけているのだと思います」

社員に動いてもらうには?

社員に動いてもらうためには、仕組みもルールも大事です。

でも、その根底にあるのは、社長やリーダーが「人の心」をつかんでいるのか、その仕組みが人の心に寄り添った運用をされているかです。

『人を動かしたいなら、「やれ」と言ってはいけない 思い通りに部下が動く“すごい"伝え方』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

以前、経営サポートパートナー会員のとある社長に、冗談まじりでこんな質問をされました。

「武蔵野の一体感は、まるで、夏の甲子園の常連校みたいですね。というか、自衛隊にもひけをとらないのではありませんか?」

「ひけをとらない」のではありません。武器効率が同じなら、武蔵野は自衛隊にも、警察にも負けない自信があります。

最後に繰り返しますが、「面倒なことはやらない。都合の悪いことはやらない」のがまともな社員です。でもそれは、ほめ方だったり、コミュニケーションの取り方だったり、上司の努力で変わっていくものです。

わが社は、大卒も、中卒に近い高卒も、中卒に毛が生えた元暴走族もいますが、全員が「決められた時間に、決められた場所で、決められた通りに動く」のは、それが理由です。

小山 昇 武蔵野 社長

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こやま のぼる / Noboru Koyama

1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。2001年から同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。全国各地で年間240回の講演・セミナーを開催している。1999年度「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。2000年、2010年には「日本経営品質賞」を受賞している。著書多数。

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