70歳まで働きたくない人の「地道な貯金法」 65歳定年制到来、スパッと仕事をやめるには?

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人事の説明では十分理解できなかったというAさんに、改めて企業年金の説明をしながら、企業年金の受給スケジュールをエクセルに入力していきました。Aさんの会社には、「終身年金」「5年または10年の確定年金」「一時金」「確定拠出年金」があります。

企業年金と公的年金の基本情報をエクセル表に入力した後、受給開始年齢をずらしたらどうなるのか、税金は概算どの程度になるのかを踏まえ、いくつかのプランを作っていきます。

65歳以降のキャッシュフローはどうなる?

大学卒業後から働いているAさんが60歳まで働くとすれば、勤続38年です。退職金を受け取る際に使える退職所得控除は2060万円。会社から通知された「退職金の見込み額」は、退職所得控除を下回るので、確定拠出年金を60歳で一括解約して退職金として合算し、退職所得控除枠を有効に使うプランも入れてみました。

この場合、企業年金の1つである確定年金は「65歳からの5年間で受給するパターン」と「10年間で受給するパターン」で比較します。企業年金も公的年金控除の対象となるので、税金面を考えると企業年金は65歳からの5年確定年金とし、公的年金は70歳まで繰り下げとした方が有利に受け取れそうということもわかりました。この連載でもお伝えしているように、公的年金は70歳まで繰り下げると、年金額が1.42倍になりますから、かなりゆとりができます。

一方、預金額は「恥ずかしながら……」ということでしたが800万円。これを加え、金融資産の全体像が把握できる形にしてからもう一度、65歳以降のキャッシュフローを見ていただきました。

Aさんに「基本的な生活費は、いくらくらいか把握していますか?」と伺うと、「よくわからない」との返答です。「手取り給与はあまり意識せず使っており、外食ばかりで多分結構使っていると思います」とのあいまいな返事です。そこで、過去のカード決済の額、銀行の口座から引き落とされている水道光熱費や通信費の額、現金の引き出し額の流れを見て、その「平均値」を「1カ月に使っているお金の目安」としました。「リタイアすれば現役時代より交際費などは少なくなる」という前提に立って、そこから少し減額しました。

こうやって計算してみると、なんとか65歳以降については、企業年金(65歳から)と公的年金(70歳から)で生活は賄えそうというメドが立ちました。しかし60歳からの5年間で退職金を一部取り崩していくにしても、生活費を賄うには足りません。同居のお母さんの「今後の介護」に備えたり、「Aさん自身の長生きリスク」を考えると、できれば退職金は手を付けずに取っておきたいところです。

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